保育士筆記試験の合格率が低い3つの理由

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6wariijou

実際に受験してみて感じたことは、保育士試験は、科目ごとに見れば合格率(10%台)ほどに難しくないということです。

勉強せずとも結構常識や既存の知識だけで解ける問題も多く、勉強の段階~1日目の筆記試験の段階では、「何でこのレベルの試験なのに合格率が10%台なのか?」と不思議に思ったくらいです。

※平成25年より試験科目名の変更・科目の統合がありましたが、このエントリー上では私が受験した当時の科目名のままにしておきます。

多分、2日間通して、全くもって手も足も出ないという人は殆どいないと思うんですよ。
ノー勉でも、2~3科目は合格できるはずです。
だけど、筆記試験全科目合格率は10%台しかいません。
筆記試験2日目終了後、自己採点をしたとき、「なるほど、うまくできてるな」と実感したわけです。

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難易度による得点調整がない

保育士試験の合格ラインは、各科目で6割以上です。
トータル点で6割ではありません。

保育士試験は、各科目が平均的に難しいのではなく、筆記試験の科目ごとの難易度の差が大きいです。

H22年度試験は、小児保健・保育原理がほぼサービス問題だったのに対し、小児栄養は管理栄養士試験並みの難易度、保育実習理論の音楽・美術問題が例年に比べてマニアックでした。
だけど、小児栄養の不適切問題による全員+5点以外の得点調整措置は一切ありませんでした。

各科目6割がクセモノ

多分これが8科目のトータル6割以上合格という基準ならば、筆記試験の合格率は4割~5割に上がるでしょう。
各科目の足切りを4割&合計点6割とか、合計得点7割以上を合格ラインとしても、合格率は3割前後になると思います。

そのくらい、各科目の難易度差が大きいです。
というか、全科目で6割をクリアするというのが曲者なのです。
どうしても1~3科目落としてしまうという人が続出してしまうのです。
筆記試験全科目一発合格者は、おそらく全受験生のうち数パーセント(3~4%くらい?)しかいないんじゃないでしょうか。

トータル点で判断する場合、仮に苦手な科目や難しい科目があっても、他の得意科目や簡単な科目でその分をフォローすればいい。
苦手な論点をバッサリカットして、ほかの得意科目で頑張るという戦法が使えます。

また、宅建社労士の場合は、難易度によって合格ラインが上下したり、救済措置で足切ラインが下がることがよくあるので、多少難しい問題があってもあまり影響はないのですが、保育士試験の場合は、科目間や年度の難易度差は一切考慮されません(ある意味日商簿記的です)。

全科目6割以上というのは一見簡単そうに聞こえるけど、苦手な科目や難しい科目もある程度の勉強量が求められることがわかると思います。おのずと勉強範囲もそこそこ広く・深くやらざるを得なくなってしまうものなのです。

科目間の難易度差、年度ごとの難易度差が大きい

ここ2~3年の傾向としては、「小児栄養」が最難関で、「社会福祉」「教育原理」「養護原理」「保育実習理論」が年によって難化したり易化する傾向にあるようです。

正直言うと、私は筆記試験の前はそんなに情報収集をしていなかったので、問題集を解いているときは小児栄養がものすごく難しいというイメージはあまりなかったんです。(細かい数値とか物質名を覚えたり、他の科目と被る箇所が少ないのでいちいち勉強するのが面倒くさいとは思っていましたが)

私個人としては、小児栄養よりも警戒していたのは、「発達心理学&精神保健」、「教育原理&養護原理」のニコイチ科目の方でした。

ニコイチ科目の片方を落としてしまう

なぜなら、試験問題がそれぞれ10問しかなく、どちらかを落とすとまた次の年も両方の教科を受けなければいけないというイヤらしい仕組みになっているからです。

で、試験問題が10問しかないからといって、勉強量が他の科目と比べて半分で済むのかというとそういうわけでもないのがまたイヤらしい。更にイヤらしいことに、ニコイチのうちのどちらかが難しいんですよねこれまた(苦笑)。

10問中6点が合格ラインということは、4問しか取りこぼしができない。そのうち2~3問は絶対に聞いたことのない論点とか重箱の隅的論点が出題されそう
…となると、過去問で出題された箇所を完璧にするのは当然として、ケアレスミスが許されないのがプレッシャーになっていました。

さてこのニコイチ科目ですが、養護原理がギリギリ30点だったものの、幸い4教科とも合格点がクリアできてよかったです。
もしここで養護原理が25点だったらと思うとゾーッとしました。落としていたら翌年8月に、また教育原理・養護原理をセットで受けに行かなければいけなかったわけですから…。

余談ですが、平成25年からは試験科目の再編成が行われます。
このニコイチ科目によるダブル受験の悲劇のうち、発達心理学&精神保健はなくなります。

でもニコイチで泣く人が多い「養護原理」と「教育原理」は25年以降もニコイチのままっぽいですね…。
この発達心理学と精神保健の統合によって有利になるのは、幼稚園教諭免許所有者だけ?
(一般の受験生は発達心理学と精神保健の両方に合格していないとH25年以降の「保育の心理学」が免除にならないが、幼稚園教諭持ちの人は最初から「保育の心理学」がまるごと免除になる)

以上、
①各科目の難易度差が大きく、とりわけ2~3教科が突出して難しい
②ニコイチ科目のうち片方を落とす人が多い(だいたいどちらかが難しい)
③難易度や得点率による得点調整・合格ライン調整がない(どの科目もある程度の難化を想定しながら勉強する必要がある⇒確実に合格するためにはおのずとそれなりの勉強量が求められる)

という3つの仕組みによって合格率が10%台に保たれているわけです。

ですので、初年度受験で一発合格を狙う人は、この点を念頭において、試験勉強に取り組んでください。

科目合格制度があることによる気の緩みも一因?

(H24.5月追記)
尤も、私が1ヵ月半で筆記試験全科目受かったのは運のよさと既存の知識によるところも大きいので、誰でも必ず1ヵ月半の勉強だけで大丈夫とは言い切れません。

置かれている環境(私は平日フルタイムで働いているけど子育てはしていません)や学習歴の違いもあるので、私の学習期間はあまり参考にならないでしょう。

しかし、3ヶ月~6ヶ月、過去問の傾向分析と問題演習、テキストを何度も繰り返し勉強すれば、初受験での筆記試験1発合格は決して不可能なことではないでしょう。

特に初受験の人こそ、本試験まで時間はなくても1年で全科目一発合格を狙う8科目10教科160問(各科目6割が足きり)の択一式試験を受けると思って全科目勉強したほうがいいです。

科目合格制度は、出産や育児で勉強の中断を余儀なくされる人、実技試験を再受験する人への配慮から設けられているもの(※推測ですが)で、筆記試験の負担を軽くするためにあるのではありません。

「今年は勉強が間に合わないから来年また試験を受ければいい」という甘い気持ちがあると、確実に足許をすくわれます。
科目合格が翌々年まで有効だと自分を慰めるのは、筆記試験(実技試験)が終わった後にしましょう。

税理士試験のように科目合格が生涯有効ならば、当初から数年計画でもいいのでしょうが、有効期限3年(合格年含めて)は思っているよりもずっと短いです。

個人的には、筆記試験の合格率が低い要因は、上記で挙げた試験制度以外にも、科目合格制度があることによる気持ちの油断も多少影響していると思います。

注;平成25年度より、
養護原理→社会的養護
児童福祉→児童家庭福祉
発達心理学・精神保健→保育の心理学
小児保健・精神保健→子どもの保健
小児栄養→子どもの食と栄養
とそれぞれ名称変更がなされています。

なお、平成23年・24年受験生の場合、「子どもの保健」は、発達心理学・精神保健・小児保健の3科目に合格していなければ免除が受けられません。

補足 保育士試験合格率

(※全科目免除者除く)
平成27年度(全国) 受験者総数・46,487人 合格者・10,578人 合格率・22.8%
平成27年度(地域限定) 受験者総数・10,814人 合格者・2,384人 合格率・22.0%
http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/hoikushi/dl/ichiran.pdf

平成26年度 受験者総数・55,137人 合格者・9,894人 合格率・19.3%
平成25年度 受験者総数・51,055人 合格者・8,905人 合格率・17.4%
平成24年度 受験者総数・52,257人 合格者・9,726人 合格率・18.6%
平成23年度 受験者総数・49,307人 合格者・6,957人 合格率・14.1%
平成22年度 受験者総数・46,820人 合格者・5,324人 合格率・11.4%(※管理人受験回)
平成21年度 受験者総数・41,163人 合格者・5,204人 合格率・12.6%
平成20年度 受験者総数・37,744人 合格者・3,989人 合格率・10.6%

※一部科目合格・一発合格率・実技試験合格率等は公表されていません。

実技試験の合格率は公表されていないので正確なところはわかりませんが、
キャリアステーション保育士講座の受講生合格率を見ると、例年95%以上とのこと。まぁ落とすための試験ではありません。(自分みたいにただノーミスなだけの淡々とした言語でも合格点をとらせてもらえましたし…)

ただ、エンゼルカレッジ掲示板やmixiコミュニティを見ると、不合格体験談が結構目につくというか、2科目のうち片方の科目を落としている人が少なくないようにも感じます。
(勿論合格者の方がずっと多いのですが)
あくまで私見ですが、講座等を利用しない独学者の実技試験合格率は8割程度なのかなと思います。

H26.4追記:「保育士試験は独学でも合格できますか?」という記事を書きました。

H28.1追記:平成27年度より、保育士不足をうけて年2回試験(一部都道府県除く)実施となったことから、受験のチャンスは3回から6回に増えました。
合格率も、10%前半~20%超と上昇し、数年前に比べて難易度は下がったようにも見受けられますが、一部の科目が難しい(点数がとりづらい)ということ・合格基準は変わっていないので、油断は禁物です。

コメント

  1. メリー より:

    とてもわかりやすく参考になる記事でした!ありがとうございました!

  2. miwa より:

    >メリーさん
    ありがとうございます。これから保育士試験を受けられるのでしょうか?是非合格できるよう、頑張ってください。

  3. 匿名 より:

    Uキャンの資格取得講座で、何度も6割取れば良い!との勧誘に負け 遂講座を受講中ですが正直 騙された! 感が強いです・・・。実際 凄い量だし働きながらどうやって時間を作るのか と質問したら「朝10分 職場での昼休憩に10分 寝る前の何分か」を細かく勉強せよ との答えが返り そんな事で本当に合格するのか?とずっと思っていました。なんか納得しました。

    • miwa@管理人miwa@管理人 より:

      「6割を取ればよい!」というのは間違ってないんですよ。
      ただ、「全科目」6割なんですよね。ここが意外と落とし穴なのかなと思うのですよ。
      ユーキャンの資格取得講座を受講しておられるようですが、実際の過去問題は見ていますか?
      おそらくユーキャンの教材にある問題集は精選系問題集(重要論点に絞ったもの)だと思うので、保養協のHP
      (http://www.hoyokyo.or.jp/exam/pasttest/ )
      で6~7年分の問題の全容を確認しておくといいでしょう。
      ここで出題されたキーワードをチェックして、ユーキャンの教材でそこを中心に読んでみる、と効果的ですよ。

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