【ネタバレあり】我孫子武丸「殺戮にいたる病」 犯人の名前は最初にしっかり書かれているのにやっぱり読み間違えてしまう件

サウンドノベルで有名になったスーパーファミコンの「弟切草」「かまいたちの夜」をきっかけに知ったのが、我孫子武丸です。

最初に読んだのは確か高校生の時でしたが、kindle版でも売られていたので、約20年ぶりくらいにまた読んでみました。

犯人は最初に書かれているにもかかわらず、最後のページを読んだあと、やっぱり最初に戻って読み返してしまった(笑)

※注:この小説は些か刺激が強すぎる描写がいくつかあるため、18歳未満の方にはあまりお勧めできません。18歳以上になってから読んでください。
(じゃあなぜJKの時にこれを読んだのだ自分)

※以下ネタバレ:結末やトリックを知りたくない人はこれ以上読まないこと


まず最初に結末を言ってしまおう。
犯人は冒頭に書いてあるとおり、「蒲生稔」です。それは間違いありません。

だけど、この小説は、「誰が犯人なのか?」はさほど重要じゃありません。

普通の推理小説のレビューだったら、私だってこんな風に犯人の名前を堂々と書いたりしませんよ(笑)
ポートピア殺人事件の「犯人はヤス」じゃあるまいしwww

でもここから先がとても重要。
というかむしろここから先がネタバレ本番ともいう。







それは、蒲生稔(犯人)は、蒲生雅子の息子ではなく、蒲生雅子の夫だということです。


読み進めていくにつれて、蒲生家の家族構成は
・蒲生雅子=稔と愛の母、専業主婦
・蒲生雅子の夫(存在感が薄いので名前を出すまでもない)
・蒲生稔=息子、東洋文化大学に通う大学生
・蒲生愛=娘
の4人家族なんだな、と思い込まされてしまう。

そして最後の最後に、その思い込みが覆されてしまうのがキモなんですよね。

犯人は既に「蒲生稔」だとわかっている。
でも最後の方までページを読みすすめていくと「え?え?ええーっ!!これ一体どういうこと!?稔=息子じゃないんかーい!」と最初に戻って確かめたくなってしまうんです。

そして、

・蒲生稔=犯人、雅子の夫。東洋文化大学の助教授
・蒲生雅子=稔の妻
・蒲生信一=雅子と稔の息子(※ただし息子の名前は最後のページにやっと出てくる)
・蒲生愛=雅子とと稔の娘
・蒲生容子=稔の母であり、雅子の義母

稔=夫と頭に入れたうえで、もう一度最初から読みなおしてみる。

蒲生雅子が、自分の息子が犯罪者なのではないかと疑い始めたのは、春の声もまだ遠い二月初めのことだった。
(ロケーション3428の44)

蒲生稔が初めて人を殺したのは、雅子が不審を抱き始める三ヶ月も前、前年の十月だった。
もっとも稔の場合、自分が他の人間とは違っていることにもう何年も前から気付いていた。具体的にどう違うのかはまだ分かっていなかったが、それを誰にもーそしてとりわけ母親にはー決して知られてはならないことは分かっていた。
(ロケーション3428の59)


ああなるほど…最初に「蒲生稔」の逮捕〜死刑判決のエピローグが書かれたあとに、雅子が、「息子が殺人を犯したのではないか」って疑っているから、稔=息子とミスリードしてしまうんだな。

そして雅子が息子のことを疑っているのと同様に、息子も「父親(稔)が殺人を犯しているのではないか」と疑って、秘密裡に父親の跡をつけて行動しているんですね。

だから父親が犯行に及んでいるであろう時間帯に、息子も同様に自宅にいない。
息子の部屋から黒いゴミ袋が発見される。
8ミリのビデオの電源を慌てて消す。
夜中に家の庭を掘り起こす。

息子の行動と夫の行動が連動しているから、息子を疑う雅子にとっては、息子が殺人を犯しているのではないかと疑ってしまいたくなる状況証拠が次々と累積されていく。

そして、島木かおる(島木敏子の妹)を殺そうとしている父(稔)を止めに入った息子(信一)は、父(稔)に刺されて亡くなってしまう。

でも稔=夫、息子=信一を頭に入れて、もう一度最初から読んでみると、ああなるほどと思うのだが、最後の最後で実母の容子(雅子にとっての義母)を殺した後の行為が、ゾクゾクするほど気持ち悪い(゚Д゚;)

そして何不自由なく専業主婦を送っていて、これからも不自由のない平凡な生活が続くと思っていた蒲生雅子にとっては、何も罪のない息子と義母は夫に殺され、夫は稀代の連続殺人犯として死刑宣告を受けるのだから、あまりにも皮肉すぎる結末だと思うのでした。

でもこの状況で一番気の毒なのは、妻よりも娘だよなぁ。
だって妻にとって夫は離婚したら赤の他人に戻れるけど、娘は殺人犯である父親と半分血がつながっているんだもの。
自分だったら死にたくなる(苦笑)

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コメント

  1. まさ より:

    私も、「かまいたち」から「殺戮」を知り、高校の頃に読みました。

    やはりネタバレになってしまいますが、

    主人公が女子高生?に「おじさん」と呼ばれた部分を読んで、「女子高生からしたら、そんなものかな」と思っていたら、きちんと伏線として回収されました(笑)

    物凄くフェアな叙述トリックに、当時、本当に驚かされました。

    殺戮以外にも面白い作品が多く、図書館で色々借りて読んだのを思い出しました。

    • miwa@管理人 より:

      まささん
      かまいたち〜ですごく知名度が上がった作家さんだと思いますよ。
      「おじさん」が伏線か〜。そう言われてみればそうですね。
      女子高生からすれば、20代の大学生は30台のおじさんに見えなくもないし、逆に43歳でも服装や顔立ちによっては30台に見えなくもない。
      見た目の印象の微妙なところをうまく突いてますよね。
      殺戮〜以外にも、腹話術の人形が出てくるシリーズとか面白かったです。