「復活力(サンドウィッチマン)」 M-1優勝から10年以上経っても売れ続けている理由がよくわかる

この本は、サンドウィッチマンの二人の生い立ち、高校のラグビー部での出会い、サンドウィッチマンの結成、上京後の売れない時代、2007年M-1の決勝戦、ブレイク後の話です。
(もともとは「敗者復活」という本で、文庫版が「復活力」です)

突然ですが、私の好きな芸人はサンドウィッチマンです。
好きになったキッカケは2007年のM-1…ではなく、youtubeでグレープカンパニー公式の「お化け屋敷」のコント動画を見たことです。

それから過去のネタ動画を見まくってサンドのお二人のコントが気に入って、この本もkindleで買ったのでした。

ただ、私自身は、2007年のM-1はリアタイでは見ていなかったので、この本を読んだ後に、2007年のM-1グランプリの決勝戦をamazonのprime videoでみてみました。
(プライム会員なら無料で見られます)

テレビに慣れてる芸人さん達と比べて、M-1司会者の今田耕司とのやり取りで空回りしてる感じが、ブレイク前の芸人っぽい。
ただこれは敗者復活戦会場の大井競馬場から連れてこられて決勝の舞台に立たされているのですから、気の利いたコメントを言えるほどの余裕がなかったからかもしれませんが…。

あと、決勝2本目で、伊達さんがネタを飛ばした瞬間。

「腹たつなぁ、お前。…ムカつくなぁ」
と、伊達がツッコミを2回繰り返した。
ん!?
2回目の「ムカつくなぁ」は台本にない。
意識的に伊達の視線をずっと避けていたけど、その時パッと目が合った。
伊達が、目でSOSサインを送っている!
ヤバい!こいつ飛んでる!次のネタが思いだせてない!!
(どうしよう…!!)
いきなり訪れた、緊急事態のトラブルだ。
そこまで何もかも順調だったから、僕もパニックだった。このくだりで、過去、ネタが飛んだことは一度もない。しかもネタが飛ぶのはだいたい、僕の方だった。それがこのときに限って、いきなり伊達に来た。
最悪なのは、伊達の「飛び」が瞬時に伝染して、その先のネタを僕も思い出せなかったことだ。
(中略)
するとー伊達が。
「ふざけんてんだろ、お前!」
と、フッとネタを思い出してくれた!
ホッとした…そこからは僕も気持ちを立て直して、「ピザのデリバリー」を順調に進めることができた。
焦った。本当に、ヤバかった。
このトラブルの間は、コンマ1秒、あるかないかだ。
(ロケーション2920の2141~2164)

生放送で見ている視聴者は気づかないだろうけど、言われてみたら…ほんのコンマ何秒、伊達さんのセリフに不自然な間が空いている!なるほど、ここでネタが飛んじゃったのか!

もし決勝2本目のネタ順の3番目が、サンドウィッチマンじゃなくてトータルテンボスだったら、トータルテンボスが優勝でもおかしくないと思いました。
でも決勝1本目でサンドウィッチマンが1位だったことで、2本目のネタ順で3番を選べたこと(決勝1本目の順位で、どの順番でネタを演じるかが選べる)、敗者復活戦から勝ち上がった勢いも含め、2007年はサンドウィッチマンが優勝するべくして優勝したと感じました。

2007年のM-1に向けて、僕は集中的に研究を重ねていた。
『紳竜の研究』など、完成度の高い漫才DVDを片っ端から見まくった。ただ見るだけじゃなくて、「間」を測る方法、言葉の使い方、ネタの磨き方、お客さんの的確なつかみ…取り入れるべきポイントを意識的にチェックした。過去のM-1決勝のDVDも繰り返し見た。決勝に進出したコンビが、何をやって、どういう技術を駆使しているか。神経を研ぎ澄まして、ネタを観察研究した。

優勝を引き寄せることができたのは、決して偶然ではなく、2006年の準決勝敗退後から1年かけて集中的に研究し、ネタに磨きをかけてきた賜物だということがよくわかります。

そしてサンドウィッチマンがM-1優勝をきっかけにブレイクした後も、2022年の今でもコンスタントに売れ続けているのは、見た目のイメージとは違い(失礼…)、性格の良さやコンビの仲の良さといった要因もあるんでしょうけど、本業であるお笑いの新作ネタを、地道に作り続けているからだと思います。

昔からの友だちにたまに連絡すると、「もう僕のことなんて忘れたと思ってたよ」なんて言われる。いやいや、そんなことないよ。むしろ、いつも気にしているぐらい。急に売れちゃったからって、いきなり偉そうになるほど、バカじゃないよ。
売れて、突然変わった人の話はよく聞くけど、僕は全然そういう感じにならなかった。そもそも偉くなったなんて思ってない。M-1チャンピオンは、途方もなくすごい称号だと思うけど、それだけで自分の芸がグーンと底上げされたわけじゃない。
もしも20歳そこそこでチャンピオンになってたら、僕自身も激変していたかもしれない。こんなに周囲の環境が変わったら、若い奴が平気でいられるわけがない。まあ、僕も初めは平気ではいられなかったけど。
紳助さんは「ほんまは30歳を過ぎてテレビに出るのが一番いいんや」とおっしゃっている。その通りだなと思う。
僕らは33歳を過ぎて、テレビの仕事で引っ張りだこになった。自分がどこまでできるのか、何と何ができるのか、年齢的にもある程度わかっているから、いろんな場面でそれなりに順応できるんじゃないかと思っている。
(ロケーション2920の2458)

新作ネタをやらなくなったら、サンドウィッチマンはおしまいだ。トーク技術もルックスも、敵わない芸人はいっぱいいる。というか、敵わない芸人さんだらけだ、この世界は。だけど、ネタだけは、誰にも怖じけないで出せるから。ネタで世間に認められた僕らが、ネタづくりから離れることはない。
(ロケーション2920の2563)

ネタが面白い芸人は?と聞かれてサンドウィッチマンを1番に挙げてもらえるのは、とてもありがたい。だけどネタを最大の武器にしているんだから、そこだけは怠れない責任と覚悟は、持ち続けている。
(ロケーション2920の2728)

確かに、お笑いで売れた後はテレビがメインのタレント、ひな壇芸人やMCにシフトしちゃう芸人さん、多いですもんね。
ひな壇やタレントの仕事がダメってわけではないですけど、芸人として楽することを覚えてしまうと、徐々に飽きられてしまって、勢いのある新人にポジションを取られてしまうのだと思います。

サンドウィッチマンのお二人が、もしM-1後に芸人からテレビタレントにシフトしていたら、おそらく数年後には消えていたか、仙台近辺でのみ活動するローカルタレントになっていたのではないでしょうか。

ブレイクしたことに驕らず、自分たちの強みや売りがちゃんとわかったうえで、地に足をつけて新作のコントを地道に作り上げているからこそ、今でも売れていることが大変よくわかります。

とはいえ、芸人の世界は、まず一発目を当てることがとても大変だと思います。一発も当てられなくて、夢破れて去っていく人も多いでしょう。

でもそれ以上に、才能あふれる芸人同士との戦いの中で、ずっと売れ続けていくのはさらに大変です。売れ続けていくにはもともとの才能を土台に、更なる努力や研究を重ねていかなければいけないと改めて感じました。

個人的には伊達さんの高血圧が大変心配ですが、体には十分気を付けていただいて、これからも面白いコントを作ってほしいと思います。

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