【R5-1】毛筆書写技能検定1級を受験してきました!~これから遠征ですか?いいえ試験ですけど何か問題でも!?

今日は、日本書道専門学校(目黒)にて、毛筆書写技能検定1級を受験してきました。

毛筆は午後13時から試験の説明が開始されますが、試験教室は12時半から開場となります。

試験室は、今回は毛筆1級の受験生だけが集められていました。

1級の受験生は、私を入れて12名、欠席者が2〜3名いたものの、全員が女性でした。

毛筆4級を受験した時(2018年1月)は、3・4・5級の教室には昭和生まれの大人は私を入れて2~3人しかいない肩身の狭い状況でしたが、逆に1級・準1級の試験では小中学生は見かけなかったです。

どんなに習字が上手な中学生でも、楷書・行書・草書の自運、細字での漢字かな交じり文、隷書を含む古典の臨書、仮名の古筆、条幅、賞状、草書の読み、書道史・書道用語の知識、旧字体・書写体の練習などを一通り網羅できている人は殆どいないからだと思います。

実技問題

1級の試験時間は、150分です。
150分で実技6種類と、理論問題を解きます。

実技の回答用紙は、半紙8枚、半切2枚、B4サイズの上質紙2枚が支給されます。

問題を解く順番は自由です。問題用紙は最後に回収されます。理論の回答用紙と、実技の回答6枚を提出します。提出しなかったほうの使用済み半紙類は持ち帰りOKです(※提出しなかったものは持って帰ってきていますが、今回の試験問題をそのままupするのはちょっとマズいかもしれない&今ひとつな部分もあるので、診断テストで提出した作品を代わりにupします)

①漢字5字を書く(楷行草三体)

漢字5文字を、楷書・行書・草書の三体で書き分ける問題です。

字句は初めて見るものでしたが、漢字自体は5文字とも過去問または条幅の練習で書いたことがある字でした。ただ手が微妙に震えていたので、1枚目はなんか慎重になりすぎたのか、線が頼りないというか、やや細くなりすぎた気がするw

②漢字仮名交じり文約50字を書く

縦書き・行書で、4~5行程度で書く課題です。
平仮名は連綿を交えてもOK。
漢字を平仮名に置き換えたり、平仮名を漢字や変体仮名に置き換えるのはNGで、問題文の通りに書かなくてはいけないはず(確か)
これは準1級とほぼ同じ内容・レベルの問題が出ます。
その分、準1級の時よりも、より上手な出来栄えが求められます。

③漢字の臨書

古典の臨書(4字または2字)が出題されます。今回は「曹全碑(隷書)」の2文字が出題されました。※診断テストの画像は白楽天詩巻です。

臨書の出題対象は準1級と同じです。楷書・行書・草書・隷書の古典がランダムで出題されます。

ただ、準1級では今のところ隷書の出題実績は殆どなく、1級では1年~2年に1回くらいの頻度で隷書(曹全碑、礼器碑、乙瑛碑など)が出題されます。

R3年度は行書(祭姪文稿)・北魏系楷書(張猛龍碑)・隷書(曹全碑)

R4年度は行書が2回(李嶠詩・白楽天詩巻)と草書が1回(十七帖)出題されていたようなので、今回は北魏系楷書か隷書がでるのでは?と予想していたのがうまいこと当たってくれました。

※ただし予想が当たったからと言って、隷書体がうまく書けるという意味ではないのが悲しい_| ̄|○

④仮名の臨書

半紙縦1/2サイズに、和歌を臨書します。今回は「高野切第一種」から出題されました。(診断テストの画像は元暦校本万葉集です)

1級の仮名臨書は関戸本古今集、高野切第一種、高野切第三種からの出題が多いです。ただ個人的には、高野切と関戸本って難易度に結構差があると思うんですけどねw

⑤自由作品(A:漢詩14字、B:漢字5字、C:和歌、D:現代詩から一つ選択)

漢字(14字or5字)、仮名、漢字かな交じり文の4つの課題の中から一つ選択して、半切に書く課題です。半切(35×135)が2枚支給されます。

管理人miwaは、Aの漢詩14文字を選択しました。

というか漢字5字・和歌(仮名)・現代詩(漢字かな交じり)は条幅で書いたことがないので(仮名条幅は1度だけ月例で書いたことがあるが)、必然的に書道教室の月例課題で書きなれているものに近い、漢詩14字を選ばざるを得なかったともいう(笑)
なので、練習の時点で、半切の漢詩14字だけに絞って練習しました。

余談ですが、試験教室内でチラッと見えた感じだと、Bの漢字5字とCの和歌を選択してる人が多く、Aの漢詩を選んでるのは私だけだったような気がするw

ちなみに今回出題された漢詩は、平成18年第1回・昭和51年第1回でも出題されたことがあるもので、家で3〜4回ほど書く練習していたものだったのでラッキーでした。

行書主体ではあるものの、流れと掠れを表現するなら草書の方が良いと判断し、敢えて草書に置き換えた文字もあります。

条幅は診断テストでは「変化に欠ける」「単調」と、あまりいい評価じゃなかったですが、今回の試験では、字の大小と墨量は診断テストの作品よりは変化をつけられたかなと思います(もう少し潤渇の渇のほうと、太細の落差が出せたら良かったのだけど…そこまでの表現力はまだないのだ)。

なお、この課題については、試験教室の空いてる床のスペースを使って、条幅用の毛氈を床に敷いて書いてもOKです。床に座って回答してもよい試験ってなかなかレアだと思う!

ところで、毛筆書写技能検定の実技課題については、名前・雅号を書く必要はありません。会場コードと受験番号だけ書くんですね。

ですが、唯一、1級の半切課題だけは雅号を書きます。
ただ、自分の雅号(または名前)を書くのではなく、「松風書」と書いて、雅印のかわりに赤マーカーで□を書き入れるよう指定されています。
なので1級だけは、持ち物に「赤マーカー」が含まれています。
(赤マーカーは賞状課題でも使います)
わざわざ雅号を書かせるということは、雅号と印も含めて一つの作品として仕上げてください、という意味だと思われます。

「条幅は別に自分の雅号でもよくないか?」と思うんだけど、人の名前(雅号)を書いてしまうことで、採点側にとって採点のブレが生じる可能性もあることから、「松風書」で統一させているのかもしれないですね。

⑥賞状を書く

賞状といっても、賞状用の厚紙ではなく、試験問題と同じタイプの上質紙(B4サイズ、枠線の印字有り)が2枚支給されます。

この課題については、回答用紙に鉛筆でレイアウト枠などの割付がOKです。
(ただし字を書くのはNG)
提出するときは、レイアウト線の書き込みを消して提出します。
また、角印の代わりに、ここでも赤マーカーで印を書くよう指定されています。

「賞状」か「感謝状」のどちらかが出題されますが、賞状の方が圧倒的に多いです。今回も賞状でした(内容は俳句大会の大賞授与でした)。

診断テストでは「全体的に文字が細いです。「賞状」を大きく太めに書きましょう。」と指摘がありましたけど、少なくとも診断テストの時より一回りくらい太く大きく書けたとは思います(多分)

理論問題

理論問題は筆記用具自由です。
平成29年までは、ボールペン・万年筆・サインペン限定だったようですが、平成30年からは筆記用具自由になったようです。

第7問A:常用漢字を旧字体で書く(各5字)

仏→佛のように、常用漢字を旧字体に書き改める問題です。
2級・準1級では、旧字体を常用漢字に書き改める問題だったのが、1級では逆になります。硬筆1級と同じ形式の問題です。

第7問B:常用漢字を書写体で書く(各5字)

常用漢字を書写体に書き改める問題です。硬筆1級と同じ形式の問題です。

第8問A:草書を読む

準1級では、草書の熟語を読む問題でしたが、1級は、古典の図版の草書5文字を読む問題が出ます。硬筆書写準1級の理論問題と同じ形式の問題です。

近年では書譜・十七帖・真草千字文からの出題が多いですが、今回は書譜から出題されました。5文字中3文字は過去問で見たことがあるんだけど、下2文字はみたことがないやつだった。

第8問B:古典(古筆)を読む

仮名の古筆を読む問題です。横に平仮名で読み方を書いていきます。

毛筆準1級・硬筆準1級・硬筆1級でも同様の出題がありました。
毛筆1級では、関戸本古今集、高野切第一種、高野切第三種からの出題が多いですが、今回は元暦校本万葉集からの出題だった気がする(うろ覚え)

第9問A:書道用語の説明

書道用語について、約60字以内で説明します(記述式)今回は「双鉤填墨」が出題されました。

これは過去問で見たことがある問題で暗記していたものだったので、速攻で解答欄を埋められて良かったです。

出題範囲は、毛筆書写技能検定の手引きや公式テキストなどに掲載されている用語から出ているようです(それ以外のところからは出ていないと思う)

第9問B:書道史

5つの古典・古筆の作品名について、作品が書かれた時代と筆者名を記述する問題です。時代と筆者名の両方正解で得点が入ります。今回はマイナーな作品は出なかったように思います。

第10問A:誤字訂正(常用漢字への訂正)

誤っている漢字10個を常用漢字に訂正する問題です。
この問題については、実は毛筆準1級と同じ問題が出るそうです。
なので「手引き」の過去問を見ると、準1級の項を参照してくださいって書いてあるし、平成18年よりも前の1級過去問には「2級の項を参照してください」って書いてあるのですw

第10問B:誤字訂正(歴史的仮名遣い)

和歌のうち、歴史的仮名遣いの観点から正しくない箇所を修正します。誤りは5か所あります。これは硬筆1級と同じ形式の問題です。

全体的な感想

理論は旧字体で一つミスったのと、草書の読みで1問わからなかった(やっぱり間違えた)程度なので、合格点は取れていると思うんですけど、問題はやっぱり実技ですかね~~~。

誤字脱字のミスはしてないと思いますが、だからといってそれだけで合格できるわけではないのは言うまでもなく。
当然、準1級よりもさらに良い出来栄えが求められます。

なんせ合格基準が、実技が535点以上/600点満点、理論が315点以上/400点満点ですよ。
実技の合格点、ほぼ90%以上じゃないですか!!
これまで受けてきた資格・検定試験の中で、こんなにも合格基準点の高い試験は初めてですよ。漢検1級ですら80%だったというのに(笑)

ただ、合格率は例年10%前後で落ち着いているところを見ると、受験生全体の中で上位1割に入る必要がある=相対評価的な側面もあると思います。

4月に受験した書写能力診断テストの出来栄え・点数と比較すると、実技はギリギリ合格点クリアか、ギリギリ不合格かのどちらかかな…という感じです。

診断テストで合格点が取れなかった賞状・条幅・かなで指摘された事項の改善が、どこまで点数として反映されるか次第ですね。

合格基準点の高さもそうだけど、他の試験とは違う、この試験ならではの特徴は、持っていく荷物がとても多い!

今回は
・筆×6本(条幅用の羊毛筆・半紙用の大筆・半紙用の中筆・漢字かな交じり文用の小筆・仮名用の小筆・賞状用の小筆)
・墨汁
・墨汁用の硯池
・仮名用の固型墨
・仮名・細字用の小さい硯
・水を入れた水さし(仮名用の墨を磨るため)
・文鎮(半紙用の長いやつ1本と、条幅用に短いやつ2本)
・半紙用の下敷き
・半切用毛氈
・ボールペン(半紙・画仙紙に受験番号を書き込むのに必要)
・鉛筆・消しゴム(理論問題の回答用)
・定規2本(賞状課題の割付用の30cm定規と、雅印用の短い定規)
・赤マーカー(条幅・賞状課題用、雅印の代わりに赤マーカーを使う)
・新聞紙(書いた作品を置いておく用)
・雑巾

・ティッシュ
・畳める円座クッション

そのほか、ペットボトルの水(給水用)、参考書(移動時間や待ち時間の間に眺める用の自作まとめノート)、受験票、身分証明書、腕時計、スマホや財布などの身の回りのもの。

4級・3級の時は単に書道セットを持っていけばよかったのが、準1級から一気に荷物が増えます。
そして1級はこれだけの荷物ですよ。
ここまで荷物が増えてしまうのは、半紙・半切・仮名・賞状と、実技の出題範囲が多岐に渡るからですね。
タイプの異なる課題が増えれば増えるほど、下敷き、筆や墨、硯、文鎮など、付随する小道具が増えていくのである…(遠い目)

今日はリュックとトートバッグの両方持参で会場入りですよ。
トートバックだけだと腕が疲れてしまうので、リュックに入れられるものはある程度入れて、リュックに入らないものをトートバッグに入れて、重さを分散させるようにしました。ここまで荷物の多い試験はなかなかないと思う!旦那からは「遠征?旅行?」と言われるしw太極拳の大会だってここまで荷物多くならないですよwww

また、床に座って条幅を書くので、下はスウェット・上は黒系のTシャツと、動きやすい&墨汚れが目立たない服装にしました。

あと、試験時間は足りなくなるかな?と思ったけど、意外とそうでもなかったです。時間は20分ほど余ったのです(余った時間で荷物を片付けたり、理論のわからない問題を粘っていた)。

おそらく賞状でかなり時間がかかりそうだと思っていたため、事前にレイアウトの組み方のパターンをほぼ決め打ちしていたのが功を奏したと思います。

というわけで、もちろん合格していたらすごく嬉しいし、ぜひ合格していてほしいですけど、でもまだまだ筆力は未熟な部分も多いから不合格でもしょうがないかな(また11月頑張ろう)…今はそんな気持ちです。

<毛筆1級試験で気づいたことメモ>
・事前に特段のアナウンスはなかったが、条幅は床の空いてるスペースで書いてもいいし、使われてない空いてる机を使って書いてもOK。
(試験官に「条幅は床で書いてもいいですか?」と聞いたら「どうぞどうぞ」という感じだった)
・今回の会場では物販がなかった。協会の教材の物販をやってるときとやってない時があるようだ…。
・試験教室についてから必要な道具類のセットに時間がかかる。13時ギリギリ到着だと結構辛いので、説明開始の20分前には教室に入っておいたほうがよさそう。
なお、準備に時間がかかるということは、終わった後の道具の片づけにも時間がかかるということである。
・試験の始まる前に仮名用の墨を磨ったのだけど、墨を磨ってから仮名臨書を書くまでにはタイムラグがある。蒸発防止用にサランラップをもってくればよかった。

文部科学省後援 毛筆書写技能検定 公式テキスト
日本能率協会マネジメントセンター
¥1,980(2024/09/13 06:18時点)
五體字類
西東書房
¥3,850(2024/09/13 03:41時点)

コメント

  1. りゅう より:

    実技の合格基準
    かろうじて90%はない(笑)

    車の免許が確か90点以上で合格でしたかねー

    5月に受験した工担アナログ通信1級
    合格していました。

    これでデジタル通信1級と合わせて
    総合通信の免状ゲットです(๑•̀ㅂ•́)و✧

    あまり好きな内容じゃなかったので
    一発合格できて良かったです。

    総合通信の免状ゲットしても
    トラフィック理論とか
    よく分からんし・・・
    他の通信も??です(・・;)

    それで、何を血迷ったか
    身の程知らずで技術士1次試験環境部門
    申込じゃいました。

    部門は最後まで機械、電気、環境の
    3択でかなり迷いましたが

    10月に受験する公害防止つながりで
    環境にしました。

    正直全く自信ないです(・・;)

    今まで受験した資格の中で
    最も合格基準は「低い」50%以上です。

    しかしながら
    基礎科目とか
    30問中15問選択して解答するとか
    今までで初のパターンです。

    一見分かる問題だけ解けばいいやんと

    思いがちですが

    優柔不断や全ての問題解いてしまったり
    マークミスなんかを切り捨てる
    罠に感じます(・・;)

    2023年はあと、公害防止と技術士1次で
    終了です。

    何とか受かりたい

    • miwa@管理人 miwa@管理人 より:

      りゅうさん
      そういえば運転免許の学科試験は90点でしたね。普免をとったのが二十歳の時だったからすっかり忘れてました。
      そうです。毛筆1級実技の合格点は89%です。
      ただ1級実技の採点は各課題につき100点~0点の中で一点刻みでつけられるのではなく、評定ごとに評価5(92点)/4(90点)/3(88点)/2(86点)/1(84点)/0(60点)と点数が割り振られているので、実技6課題のうち、4課題で評価4以上を取らないと合格点がクリアできない仕組みになってます。
      (評価2の課題が一つあっても、評価5の課題があればリカバリーはできますけどね)
      ちなみに0は規定違反で、これが一つでもあると、他の科目がどんなに良くてもトータルで合格点に届かない罠w

      工担アナログ1級と総合通信、ついにゲットしましたね!(๑•̀ㅂ•́)و✧おめでとうございます!
      それにしても技術士の合格基準50%ってかなり低いですね。

  2. べし より:

    今はどうかしりませんが、40年前は自動車の免許は、学科90点以上、実技60点以上が合格でした。大特で、実技60点でギリギリ合格。不器用ですから。
    さて、コロナで職場で行動制限が出て趣味のために都会に行って感染の危険を増やすのはどうかと思い資格試験から遠のいていました。親の介護も始まったので退職し無職になりました。洗濯、掃除、朝昼晩の食事準備の合間に時間が出来、何かした方がいいのかなと思い、電験三種を持っているので、第二種電気工事士でも勉強しようかなとも思いますが、不器用、趣味のために工具等で数万円も使うのかと悩んでいます。
    みわさんは、今では書道、漢字に趣味が移っているみたいですね。もう資格試験は興味ないでしょうか。

    • miwa@管理人 miwa@管理人 より:

      >べしさん
      運転免許の実技は60点以上なのですね。
      教習所で実技を受けたことしかないので、合格基準点を意識したことはあまりなかったです。
      点数というよりは、コレをやったら落ちる(脱輪や赤信号無視とか)くらいしか考えてなかったかも。
      二電工自体はそんなに難しくないのですが、工具と器具が意外と高くつく気がします。

      ここ2~3年はすっかり資格マニア業から離れてしまってますが、
      これまで資格に注いでいた時間とお金を書道に吸い取られていると言った方がいいかもしれない。あとは武術の練習もあるけど、こっちはそこまでお金を吸われてる感がない…良くも悪くも、選手としてはまだまだなので。

タイトルとURLをコピーしました