個人的には、毛筆準2級以上は、書道教室か、カルチャー講座などで、上級者から直接、専門的に習う&書いたものを添削してもらう機会を作った方が絶対に効率が良いと思います。
小中学校の授業でしか書道をしたことがない人(つまり2017年6月以前の私みたいな人)が独学で毛筆書写検定の練習をするとしたら、せいぜい3級か4級で限界が来てしまいます。
なぜかというと、小中学校の書写の授業は、楷書がメインで、申し訳程度に行書の初歩に少し触れる程度までしか習わないからです。
また、小中学校の書写の授業では、書体や点画に応じた筆の使い方について、個別具体的に教えてもらえる機会も殆どないからです。
小中学校の授業で「半紙に楷書」しか書いたことがないレベルの人が、行書(3級以上)、細字(3級以上)、臨書(準2級以上)、草書(2級以上)、仮名(2級以上)、条幅(1級)、賞状(1級)の書き方・筆法を、独学で練習する。
今の時代でしたら、youtube動画やネット、DVD教材、通信講座などをうまく活用すれば、独学でも練習しようと思えばできなくはないのかもしれません。だから全くもって不可能だとは言いません。
やろうと思えば出来なくはないのかもしれないけど、でも私自身、書道教室に通ってみて、これらのすべてを独学で習得するよりは、特にガチ初心者のうちは、上級者に筆遣いを教えてもらう方が手っ取り早く技術が身に付くと感じました。
それに筆遣いの技術的な面だけでなく、そもそもどういう道具を用意したらいいか、どこで道具を買ったらいいのかもよくわからない。
どんな本を使ってどんな練習したらいいのかとか、臨書にしても手本のどこに注目しながら書けばいいのかなど、小中学校の書写の知識だけではわからないこと・想像がつかないことがけっこう多いんです。
普段は資格試験の勉強は極力独学で済ませている私ですが、書道に関しては、書道教室に通っていなかったら、1級どころか3級すら多分いまだに取得できていないと思います。
書写技能検定は、書道を習う前から興味はあったものの、独学ではどうやって対策したらいいか、どんな道具を用意したらいいのかも正直良くわからなかったからです。
書道教室に通っているからこそ、結果的には毛筆準1級・1級に合格できるだけの実力を身に付けることができたと思っています。
それは間違いありません。
ですが、単に書道教室に通いさえすれば、自然と硬筆1級・毛筆1級に受かるだけの実力が身につくのか?というと、そんな単純な話ではないと思います。
まず単純に、週1回2時間の練習では、練習量が絶対的に足りないからです。
週1で2時間ということは、毎週休まず通ったとしても、52×2時間=104時間にしかなりません。
週1回ペースで書道教室に通って2時間練習する程度の練習量だと、おそらく教室に20年通っても毛筆1級に合格するのは無理でしょう。
あと、大半の書道教室で使用している教材や競書誌は、必ずしも書写技能検定の出題傾向に沿っているとは限らない。
検定対策に特化した教室や講座もあるにはあるのでしょうが、書道教室全体で見れば、そういう教室は決して多くはないと思います。
また、書道教室の先生が、書写技能検定1級の実技(楷書・行書・草書・隷書・仮名・細字・条幅・賞状)を全てを網羅できているとも限らないです。
特に、漢字が専門の先生は、仮名は門外漢という方も少なくないです。
全く書けないということはないでしょうが、書道教室の先生=満遍なくなんでも書けるわけではなく、ある程度専門・得意分野が偏っているのがむしろ普通です。
私が通っている教室も、基本的には競書誌の月例課題の練習と、公募展への出品がメインなので、どちらかといえば芸術系寄りだったりします。
教室では書写技能検定対策の練習は全くと言っていいほどやってないです。(そもそも先生が書写技能検定の級を持ってない)
今の競書誌は、一般部にも硬筆部門があり、また上段者の昇格試験には理論試験もあり、実用細字課題では賞状作成の課題が出ることもあるので、書写技能検定の内容と被っているところが結構多いのです。
ただ、被っているとしても、競書誌の課題や昇格試験をこなすだけで準1級・1級に合格できるか?と言われたら、これだけだと絶対的に量が足りないと思います。
ですが、最初の競書誌(一般部)では、楷書規定・随意課題・研究課題(古典)・細字・仮名(古筆の臨書)・条幅・実用書の7つがあったものの、「平仮名・カタカナ」「漢字かなまじり文」「賞状」を練習する機会がありませんでした。
このように、教室で練習できる範囲から漏れてしまっているジャンル、先生の門外漢のジャンルについては、別の先生に習う、通信講座を利用する、過去問や参考書類でもって独学で学ぶ必要がある。
一般部(高校生以上)の課題であれば、何かしらの古典の「臨書」をする機会はあると思いますが、その臨書にしても、先生チョイスの課題や競書誌に載ってる参考手本を練習しているだけだと、試験範囲を網羅できるだけの練習はなかなか積み上がっていかないと思います。
私の場合だと、月例課題(随意&研究課題)では、蘭亭序・風信帖・曹全碑・雁塔聖教序・張猛龍碑・十七帖・皇甫府君碑は練習したことがありました。
ですが、九成宮醴泉銘、孟法師碑、孔子廟堂碑、書譜、真草千字文、草書千字文、枯樹賦、晋祠銘、興福寺断碑、高貞碑、牛厥造像記、始平公造像記、願氏家廟碑、鄭文公下碑、白楽天詩巻、争坐位文稿、祭姪文稿、礼器碑、乙瑛碑、西狭頌、史晨後碑は臨書したことがなかったです。
仮名も、高野切第一種・第三種・粘葉本和漢朗詠集は仮名課題で書いたことがあったけど、関戸本古今集や伊予切、元永本古今集、高野切第二種、升色紙、寸松庵色紙は書いたことがありませんでした。
月例課題で臨書したことがない古典は、毛筆書写技能検定の過去問や、臨書用のテキストを参考に、自宅でテキストを見ながら臨書の練習をしていました。その点では臨書も大半が「独学」でした。
結局のところ、「毛筆書写準2級・2級・準1級・1級に合格するためには、書道教室で習っている技術をベースにして、試験範囲と出題傾向にそった練習は自力で積み重ねていかなければならない。書道教室の課題に加えて、別途、独学で書写技能検定対策の時間を作る必要がある」ということです。
そう考えると、書道教室を選ぶ時は、必ずしも書写技能検定対策に特化した教室でなくても良いのかなと思ったりします。
検定対策に特化した教室に比べると多少回り道になってしまうかもだけど、要は筆遣いの基本的なこと、作品の作り方、書道に関する知識などを過不足なく教えてもらえるのならば問題ない。
小中学校の書写程度の知識のところから独学で練習をするのはとても大変ですが、教室である程度の技術と知識を習得していれば、独学でも検定対策の練習はできるようになるからです。
それに検定に合格することだけが書道ではなく、書写技能検定1級を持っていなくても、美しい字・素晴らしい作品を書く書家の先生はたくさんいらっしゃいます。
よっぽど書写技能検定を嫌っている先生でなければ、仮に教室で特段の検定対策をしていなくても、「過去問の課題を書いたので添削してほしい」「条幅作品の作り方を教えてほしい」「この古典の書き方のコツを教えてほしい」などとお願いすれば、大抵の先生は協力してくれると思います。
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