毛筆1級の書道史は、作品名に対して、時代と筆者名を記述する問題が出ます。

なので答えをピンポイントでわかっていないと書けません(苦笑)
(もっとも、検定試験が出来立ての頃は、作品の読み方と筆者を答える問題や、硬筆1級と同形式の多肢選択問題が出題されていた時もありますが、現在は作品名に対して筆者名・書かれた時代を書かせる形式で出題されています)
ただ、「知らないと書けない」問題ではあるものの、記述式ということを考慮してなのか、問われる作品・筆者名の範囲は硬筆1級よりも狭いように感じました。
というのは、硬筆1級の書道史では、前漢・後漢時代・宋時代の作品などがたまに出題されることがありますが、毛筆1級では、中国の作品は北魏~唐、日本の作品は飛鳥時代(聖徳太子)・奈良時代(光明皇后・聖武天皇)・平安時代くらいまでですし、作者名が不詳とされている作品も殆ど出題されないからです。されても筆者名の書きようがないですし。
書道史の試験対策としては、過去問をできるだけ多くかき集めて、実際の出題形式に合わせて覚えるのが手っ取り早いです。
ただ、作品名・筆者名・時代の3点セットを棒暗記するだけでは中々覚えづらいので、図版とセットで覚える&第3問(漢字臨書)・第4問(仮名臨書)と併せて覚えようにすると、記憶の効率も良くなると思います。
どういう作品なのか、特徴や内容の周辺知識が頭に入っていれば、その分記憶の定着率も良くなります。
図版は、ネットや国会図書館のデジタルアーカイブで検索するのも悪くはありませんが、数十件分の図版をいちいち検索するのは面倒くさいので、図版が載っている本を見る方が効率良く覚えられると思います。
「毛筆書写技能検定の手引きと問題集(2019年版・楽天kobo)」の他、「臨書で学ぶ古典の美」、高校の書道の教科書(光村図書出版・教育出版・東京書籍などから出版されています)がお勧めです。
準1級や硬筆では、その作品の時代までは意識して覚える必要はなかったですが(※もちろん一緒に覚えられるならそれに越したことはないけど、準1級の段階でそこまで意識して覚えている人はそんなにいないと思う)、毛筆1級では、作品がかかれた時代名と筆者の両方が回答できなければ点数がもらえません。
ですので、時代ごと、筆者名ごとに知識を整理する時間を作るようにすると、記憶の定着にも役立ちます。
書道史については、よっぽどマイナーなものが出た時はしょうがないですが、定番の問題は確実に解けるようにしたいですし、得点源にしやすい問題でもあります。ここは是非5問とも正解できるようにしておきましょう。
参考:書道史まとめ(筆者別、時代別)
※硬筆1級受験時にまとめたものを時系列に並べ替えたので、毛筆1級では出題実績がない作品・作者も含まれています。
秦
李斯:泰山刻石
前漢
史游:急就章
(筆者不明):木簡
後漢
仇靖:西狭頌
(筆者不明):曹全碑、張遷碑
三国(魏)
鍾繇:宣示表、薦李直表
東晋
王羲之:蘭亭序、十七帖、喪乱帖、黄庭経、孔侍中帖、楽毅論
王献之:中秋帖、洛神賦十三行、地黄湯帖
北朝(北魏)
鄭道昭:鄭文公下碑、論経書詩、雲峯山題字、天柱山刻石
(筆者不明):牛橛造像記、始平公造像記、張猛龍碑、高貞碑
南朝(隋)
智永:真草千字文(6世紀後半)
唐の時代
★初唐の三大家
欧陽詢:九成宮醴泉銘、皇甫府君碑、化度寺碑、温彦博碑(虞恭公碑)
虞世南:孔子廟堂碑、積時帖
褚遂良:枯樹賦、孟法師碑、雁塔聖教序、哀冊、伊闕仏龕碑
※王義之:集王聖教序(672年、懐仁が王義之の書から集字したもの)、興福寺断碑(721年刻、大雅が王義之の書を集字して建てたもの)
唐太宗:温泉銘、晋祠銘
孫過庭:書譜
顔真卿:祭姪文稿、争座位文稿、建中告身帖、多宝塔碑、顔氏家廟碑、麻姑仙壇記、祭伯文稿
懐素:自叙帖、草書千字文(千金帖)、聖母帖
柳公権:玄秘塔碑
賀知章:草書孝経
顔師古:等慈寺碑
北宋
蘇東坡(蘇軾):黄州寒食詩巻
黄庭堅:松風閣詩巻
※宋の四大家…蔡襄・蘇軾・黄庭堅・米芾
<日本の作品・筆者>
飛鳥時代
聖徳太子:法華義疏
(筆者不明):宇治橋断碑
奈良時代
光明皇后:楽毅論、杜家立成雑書要略
聖武天皇:雑集(宸翰雑集)、賢愚経
(筆者不明):仏足石歌碑、多胡碑
平安時代
★平安時代初期の三筆
空海:風信帖、灌頂記、三十帖策子(三十帖冊子)、請来目録
嵯峨天皇:光定戒牒、李嶠詩
橘逸勢:伊都内親王願文
★平安時代中期の三跡
小野道風:玉泉帖、屏風土代、継色紙、秋萩帖、本阿弥切
藤原佐理:離洛帖、詩懐紙
藤原行成:白楽天詩巻、関戸本古今集、粘葉本和漢朗詠集、升色紙、伊予切、曼殊院本古今集、大字朗詠集切、蓬莱切
最澄:久隔帖、請来目録
紀貫之:寸松庵色紙、高野切、土佐日記、自家集切、桂本万葉集
源俊頼:元永本古今集
<★毛筆書写技能検定1級対策>
<準備・工夫>
・毛筆書写技能検定1級 使用したテキスト・字典・過去問・道具類まとめ
・毛筆書写技能検定1級に一発で合格するために行った事前準備と工夫
・毛筆書写技能検定1級対策(準備編)~過去問を出来るだけ多くかき集める(主に国会図書館で)
・【毛筆書写技能検定1級・準1級対策】筆を持たなくてもできる練習は意外とある
・毛筆書写技能検定1級に一発で合格するコツ①~理論は10分以内に完答できるレベルまでやり込む
・毛筆書写技能検定1級に一発で合格するコツ②~「賞状」を1枚25分以内で書けるようにする
・【硬筆・毛筆書写検定】苦手な科目でも評価4をもらうコツ
<各問題ごとの対策>
・毛筆書写技能検定1級 第1問(楷行草三体)対策~第5問Bも参考にする。草書体のインプットはペン書きで練習する。中筆を何本か試してみる。
・毛筆書写技能検定1級第2問(漢字かな交じり文)行書に調和した平仮名の練習を重点的に行おう
・毛筆書写技能検定1級第3問・漢字の臨書対策~形臨に重点を置いて練習する。
・毛筆書写技能検定1級第3問 楷行草三体よりも臨書の練習に力を入れていた理由
・毛筆書写技能検定1級 第4問かな臨書対策~高野切第一種・第三種、関戸本古今集の3冊を重点的に練習する
・毛筆書写技能検定1級・第5問条幅対策(漢字14字)~五体字類で集字する、「変化」を意識する
・毛筆書写技能検定1級・第6問賞状対策 レイアウトの組み方に慣れる・字はある程度大きく太く書くと重厚感が表現できる
・毛筆書写技能検定1級:賞状の失敗例と合格点が取れる答案の比較
・毛筆書写技能検定1級第8問A・草書読み問題対策~書譜・十七帖・真草千字文の臨書をする、硬筆準1級の過去問を参考にする。
・毛筆書写技能検定1級・第9問A書道用語対策~「手引き」の書道用語は一通り押さえておく、単語カードは敢えて手書きで作る。
・毛筆書写技能検定1級第9問B(書道史):時系列で覚える・作者ごとに覚える、漢字で作者名を書く練習をする
・硬筆書写技能検定1級:第10問B(歴史的仮名遣い)対策〜中学生・高校生用の古文の参考書を読む、過去問で誤りパターンを覚える
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