毛筆書写技能検定1級・第6問賞状対策 レイアウトの組み方に慣れる・字はある程度大きく太く書くと重厚感が表現できる

第6問の賞状課題のキモは、レイアウトの組み方に慣れること、細筆でキッチリした骨太な楷書体が書けるかどうかだと思います。

2019年版の手引きによると
第6問の賞状の問題は、賞状としての重厚感を出し、重みと存在感がでるようなものに仕上げてください。そのために表題と氏名、本文、日付、学校長名は、一行ないし複数行の固まりになるよう行間と文字の大きさを変えると区別がつきます。書体は楷書がよく、墨はなるべく濃いめのものを使用してください。また最後に、印の位置を赤の油性マーカー(耐水性顔料のマーカー)で□を書いて示してください」とありました。

手持ちの過去問のデータを集めたところ、「賞状」の出題内容は、

内容:スポーツ系の大会~マラソン、テニス、バスケットボール、バレーボール、サッカー、球技大会など

文化系のコンクール~俳句、英語、珠算、写真、書道、美術など

賞の内容:優勝、特選、大賞、市長賞など

贈与者:学校長、市長、県知事

受賞者:クラスまたは個人

賞状の方が出題回数は圧倒的に多いのだけど、永年勤続をたたえる「感謝状」を書かせる回も数回お見かけしました。

なので、「賞状」と「感謝状」の2パターンを練習しておくと安心です。(画像は過去問より引用。日付は基本的には試験が実施される日で出題されますので、管理人が毛筆1級を受験した日の日付で練習していました)

毛筆書写1級で出題される賞状は、B4サイズで決まっていますし、本文は3行または4行程度で済む短い文章です。

また、専門の賞状書士のような、高度な技術も要求されません。
「賞状は専門じゃないけど、頼まれたらそこそこ書けますよ」程度で十分合格点がもらえます。
そもそも毛筆1級の賞状では、レイアウト線や図形(〇や□)程度の下書きまでしか認められていませんしね。

ただ、毛筆1級の大変なところは、理論と実技を合わせて150分「しか」ないことです。

特に賞状はキチッとした楷書体が求められているので、1枚を書くだけでもどうしても時間がかかってしまう。
回答用紙も、墨を吸い込まない紙なので、乾くのに時間がかかります(なので最初の方で2枚とも書いてしまって、終了間際になったらレイアウト線を消すことになる)。

本文を書くのに一定の時間がかかるということは、レイアウトを組む段階で「ここは何センチ余白を取ればいいかな~」などと迷っている時間が勿体ないということです。

もちろん、3行または4行のどちらで書くとか、各行に何文字ずつ割りつけたらよいかは、試験当日に問題文を読まないと決められません。

事前に完全に1パターンで決め打ちをすることはできないので、現場で初めて試験問題を見た時に、臨機応変に対応できるようにしておく必要はあります。

それでも、過去問を10~20パターン練習することで、行間や字間、余白などのレイアウトの組み方など、ある程度自分なりのルーティンを作ることはできます。

当然、事前に決められる箇所は事前に決めておいた方が時短できますので、過去問の練習はとても大事です。

私はこんな要領でアウトラインを作っていました。

①まずは、問題用紙に書かれている賞状本文の文字数と言葉の区切り位置をカウントする。

文字数と内容によって、本文を3行で書くor4行で書くかを決める。

3行で書くと決めたら、
②天地左右に1.5cmの枠を書く。 また、縦の10.5センチ(中間地点)で、横線を書き足す。

③左側の枠から1.5cm(贈者名)・3.5cm(日付)・3.5cm(本文)・3.5cm(本文)・3.5cm(本文)ごとに縦線を引く

④右側の枠から3cmで縦線を引く(「賞状」あるいは「感謝状」を書くところ)

⑤本文1行目と賞状の中間地点(本文から4cmのあたり)に線を引く(賞・受賞者名)
といった具合です。

本文を4行で書く場合は、③は1.5cm(贈者名)・3cm(日付)・3cm(本文)・3cm(本文)・3cm(本文)・3cm(本文)のところで縦線を引きます。

この一連の「鉛筆でレイアウト+筆書き+印(赤マーカーで書く)」で、1枚当たり20分以内で書けるように練習を繰り返しました。

もっとも、試験本番では、誤字脱字をしないよう、文字や字数のチェックにより時間をかけたため、1枚あたり25分かかりました。

(なお、レイアウト線の消しゴムかけは、墨や赤マーカーで紙を汚すリスクを考えて、試験の終了間際に2枚まとめて行いました)

本番ではやや余計に時間がかかったとはいえ、普段の練習では1枚20分で書けるようにしていたからこそ、本番は1枚25分で書けた…ともいえます。

賞状は一級で初めて出題される実技ですし、書道教室に通っている人でも、賞状の書き方を専門に習っている人は決して多くないと思います。

ですので、毛筆1級の受験時点で初めて書状書きの練習を始める人が大半だと思います(私もそうでした)。

それゆえに、最初はすごく難しく感じてしまい、中々練習に取り掛かれず後回しになってしまう方も少なくないかもしれないです。

あるいは、第1問の楷・行・草のうち、草書のインプットに時間がかかってしまったり、第5問自由作品の条幅練習などに時間をとられて、どうしても賞状の練習にまで手が回らないとかね。

(もちろん、第1問も第5問もある程度練習しないと上手には書けないのだが)

ですが1級実技の第1問~第6問の中では、「賞状」は過去問のパターン練習の成果が出やすい問題であり、得点源にできる問題だと思います。

もちろん、ある程度小筆の扱いや実用書道に慣れていることが前提にはなりますが、賞状の過去問パターン練習を40~50枚やれば、実は賞状で評価4(90点)または評価5(92点)を取るのは難しくないんです。

私個人の実感としては、もしかしたら毛筆1級合格者の大半は、賞状で評価5(最低でも4)をもらっているんじゃないか!?と思いますし、賞状で評価5が貰えるくらいの練習をやり込まないと1級合格は難しいと思うくらいです。

というのは、

第1問:草書体がわからない漢字が出題される可能性がある

(少なくとも、1級第1問の過去問や第5問など、ある程度幅広く草書体を自運で書けるようにしておく必要はある)

第3問・第4問の臨書:回によって当たりハズレが大きい

(自分にとって苦手な書体・難しい字・書いたことがない作品が出ると、書き慣れてないが故に得点が伸び悩む)。

第5問の自由作品(条幅):高得点を取ること自体がかなり難しい

(ある程度半紙で書いたことがある字のストックがないと条幅自体うまく書けないし、条幅をある程度書き慣れていたとしても、支給される画仙紙2枚以内で、そこそこ作品として完成度があるものを書きあげるには、よっぽどのベテランじゃないとなかなか難しいと思う)

そう考えると、過去問の練習を数十枚やりさえすればコンスタントに高得点を確保できる問題は、第2問の漢字かな交じり文と第6問の賞状の2つだけだと思うんです。

ですので、賞状は食わず嫌いをせず、是非とも得点源にできるよう、練習していただきたいです。

最初は字粒がうまく揃わなかったり、縦軸がズレたりでなかなかうまく書けないかもしれませんが、枚数をこなしていけば、コツがつかめていくと思います。

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<各問題ごとの対策>
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硬筆書写技能検定1級:第10問B(歴史的仮名遣い)対策〜中学生・高校生用の古文の参考書を読む、過去問で誤りパターンを覚える

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