毛筆書写技能検定1級・第5問条幅対策(漢字14字)~五体字類で集字する、「変化」を意識する

この課題は、A漢字14字・B漢字5字・C仮名・D漢字かな交じり文の4つの中から、一つを選んで書きます。

この課題は「B漢字5字」を選ぶ人が一番多いんじゃないかなと思いますが、私はAの漢字14字を選択していました。

管理人が1級を受験した時、試験教室10人の中では、漢字5字と仮名を選んでいる方が多いように見受けられましたが、漢字14字を選んでるのは私だけだった気がする…。

1級受験者の中では少数派かもしれない漢字14字ですが、私は普段教室で書いてる条幅の参考手本の大半が漢字20文字なので、それに一番近いのが14字の課題だった…そういう意味では選択の余地がなかったわけですwむしろ近代詩文や仮名の条幅を書ける人が羨ましい。

でも、普段書いている条幅と近い感覚で作品が作れたし、無駄に迷うことなく1点に絞って対策ができたので、これはこれでよかったです。
(※硬筆準1級の時は、「漢字かな交じり文」と「漢字」のどちらにしようか迷って両方練習していたけど、直前期に漢字のみに絞った経緯がある。硬筆1級では迷わず漢詩を選んだ。)

さて、第5問の自由作品を書くにあたってのポイント。

2019年版の手びき(P109)によると、

この問題は、どの問題を選択してもよいわけですのでもっとも自分の得意とするものを選ぶことが大切です。作品として仕上げるものですので、墨の潤滑や遅速緩急、文字の大小など変化のあるものにする必要があります。また、よくでる漢字の草体や変体仮名などを第1問(楷行草の三体)や第3問(漢字の臨書)、第4問(仮名の臨書)の学習の中で培っておくと役に立ちます」とありました。

過去問より、過去に出題された14字をノートにピックアップ。

書体字典(五体字類など古典系の字典)を使って、行書を中心に(ところどころ草書を交えながら)集字する。

そして、自分なりにレイアウトを考えてみる。

「墨の潤滑や遅速緩急、文字の大小」が大事とのことですので、
・どの字を行書または草書で書くか。
・大きく書く字と小さく書く字。
・どこで墨を足して、どの字を掠れさせるか。
・連綿を入れるとしたらどこで入れるか
・書写体に置き換えた方がよい字があったら置き換えてみる。
・空間の取り方(密集するところと、空けるところをつくる)

といった具合で、1題につき1ページを使ってレイアウトを考えて、作品を書きました。

手持ちの「手びき」や過去の合格答案例を見ると、行草体でも合格点は取れると思うんだけど、「書検NEWS119号」の中央審査委員会レポートでは、「2行書きにおいて、行書と草書が混在した答案が散見されました。統一してまとまりのある構成が必要です」とありました。

え…行草体で書いたらダメなの…!? 行草体の作品って書道展ではよくあると思うんだけど、検定では評価されないのか?

でもこれは、「統一してまとまりのある構成が必要です」とあるので、行草で書くのがダメなのではなく、単純に行書と草書を織り交ぜて書きました、ではまとまりに欠けるからダメということなんだろう、と解釈しました。

とはいえ、むやみに混在させない方が無難なのは間違いなさそうなので、行書主体で書くのがいいのか、草書主体で書くのがいいのか?をちょっと考えてみました。

これが20文字の五言絶句・28文字の七言絶句であれば、草書主体で作品を書いても良いかもしれませんが、試験課題は14字「しか」ないため、草書onlyや草書主体にすると、漢字の画数が少なくてどうにも間がもたない感じになりそうです。

なので基本的には行書をメインにして、同じ字や部首などが被ってしまうとき、行書よりも草書に置き換えた方が作品としてのまとまり感や味、変化の表現ができそうな時は、草書体に置き換えることにしました。

例えば、「海」「梅」「樹」などは、行書よりも草書体の方が、次の字に連綿で繋ぎやすいですし、また縦長に引き延ばすこともできるので、これらの字が出た時は草書体に置き換えていました。

また、「古典の表現を作品で活かしましょう(古典学習で様々な技法を身につけ、表現に工夫を凝らしましょう」ともありましたので、常用漢字系の書体辞典よりも「五体字類」などから集字して書稿を作りました。

書道教室の先生から教わった、14字で行草体の条幅作品を作る際のコツ・テクニック
普段の月例課題の条幅課題でも同じようなことは言われていますが、改めて教えてもらったことをメモしておきます↓

・14文字ならば、行書を多めにしたほうがよい(ただでさえ漢字が少ないので、草書主体だと紙面がスカスカになりやすい)
・縦棒を伸ばす字は下に長く伸ばせる(聲、中、川、竹、平、りっとうなど)
・字を大きく(小さく)したり、しんにょうの横線を張り出すなどで変化をつける。
・画数の少ない字(日、白、山、口、漢数字など)は小さくできる。その小さい字のところで墨をたっぷりつけるようにする。

・2~3字を1まとまりにする。
・同じ漢字があったら、片方は行書、片方は草書に変えたりして、書き方を変える。
・同じ編・旁(明、糸へん、さんずいなど)があるときは、書き方を変えて変化をつける。
・「風」「飛」など、「遊べる漢字」があったら筆を大胆に動かしてみる。
・墨をつける位置は、左右同じにせず、位置(高さ)をズラして変化をつける。
といったことです。

また、過去に出題された漢詩をexcelで並べてみたところ、過去に出題された漢詩が再度出題されることが度々あるようでした。

※実際、R5-1で出題された漢詩は、平成18年第1回と昭和51年第1回に出題されたことがあるものでした。

なので、すべての過去問について、一応行書・草書体は調べたものの、布置や書体、潤滑を考慮しながら作品として書く練習をしたのは、第1回試験(6月実施)の過去問だけにとどめました。(受験するのはR5年度第1回試験だったため)

ところで、2023年4月に受験した書写能力診断テストでは、ほぼ行書onlyで作品をかいたら、評価2にとどまってしまいました。

この時、「表現をさらに学習しましょう」「変化に欠け単調です」「大小、太細、潤渇の変化を意識しましょう」とのコメントがありました。う~~~ん、手厳しいな!

幸い、字形や書体に関する指摘はなかったものの、「変化」が乏しいがゆえに単調、一本調子に見えてしまうと、あまりよい評価が得られないようです(特に漢字の行書・草書作品の場合は)。

この指摘事項については、墨を付ける量と位置を工夫すること、画数の少ない字を小さく書いたりすることで、字の大小、太細、潤渇の変化の幅を大きくするように心掛けました。

診断テストでは1~2字ごとに墨をつけてしまったのだが、字が掠れてもいいから3~6字ごとのブロックを意識するようにしました。

実際、画数の少ない字を小さ目に、墨を付ける場所に「変化」をつけただけでも、潤渇と大小の差が大きくなり、見栄えも変わるのがよくわかると思います↓

あと、最初は磨った墨で書いていたんですが、水分量の調整が面倒くさい&余計な荷物を増やしたくなかったため、墨汁で書くことにしました。

公募展や昇格試験のように、何十枚も練習したものの中から1枚を選ぶのならば、墨の濃さを微調整しながら書けますが、毛筆書写1級では、試験当日に配られる半切は2枚だけ。また、試験時間も、実技理論合わせて150分。

この中で賞状2枚が少なくとも50分、理論は見直し含めて10分かかる。

残り90分で、半紙4枚(楷行草三体、漢字仮名交じり文約50字、漢字臨書、仮名臨書)と条幅の自由作品を書くわけです。道具の持ち替え時間の節約と、当日の荷物を減らすため、墨汁を使うことにしたのでした。

最後に、条幅の自由作品を得点源にできる人は、よっぽどのベテランじゃないと難しいと思います。試験本番は半切用紙が2枚しか支給されず、試験問題用紙に書かれた活字をもとに、自運で書かなくてはいけないからです。

なのでこの科目については「足を引っ張らないことを目標にする」と割り切っても良いのかもしれません(足を引っ張らないレベルに持っていくのも結構大変だったけど)。

それでも、確実に良い評価を取りたいのであれば、過去問で手たことのある漢字14字を、実際にいろんなパターンで書いてみるのが一番良いと思います。うまいこと本番でも書いたことがある漢詩が出てくれたらラッキーだし、ピンポイントで同じ漢詩が出なかったとしても、漢詩でよく使われる漢字というのはある程度決まっているので、「この字が出てきたらこう表現してみよう」と、部分的に応用できるようになるからです。

<★毛筆書写技能検定1級対策>
<準備・工夫>
毛筆書写技能検定1級 使用したテキスト・字典・過去問・道具類まとめ
毛筆書写技能検定1級に一発で合格するために行った事前準備と工夫
毛筆書写技能検定1級対策(準備編)~過去問を出来るだけ多くかき集める(主に国会図書館で)
【毛筆書写技能検定1級・準1級対策】筆を持たなくてもできる練習は意外とある
毛筆書写技能検定1級に一発で合格するコツ①~理論は10分以内に完答できるレベルまでやり込む
毛筆書写技能検定1級に一発で合格するコツ②~「賞状」を1枚25分以内で書けるようにする
【硬筆・毛筆書写検定】苦手な科目でも評価4をもらうコツ
<各問題ごとの対策>
毛筆書写技能検定1級 第1問(楷行草三体)対策~第5問Bも参考にする。草書体のインプットはペン書きで練習する。中筆を何本か試してみる。
毛筆書写技能検定1級第2問(漢字かな交じり文)行書に調和した平仮名の練習を重点的に行おう
毛筆書写技能検定1級第3問・漢字の臨書対策~形臨に重点を置いて練習する。
毛筆書写技能検定1級第3問 楷行草三体よりも臨書の練習に力を入れていた理由
毛筆書写技能検定1級 第4問かな臨書対策~高野切第一種・第三種、関戸本古今集の3冊を重点的に練習する
毛筆書写技能検定1級・第5問条幅対策(漢字14字)~五体字類で集字する、「変化」を意識する
毛筆書写技能検定1級・第6問賞状対策 レイアウトの組み方に慣れる・字はある程度大きく太く書くと重厚感が表現できる
毛筆書写技能検定1級:賞状の失敗例と合格点が取れる答案の比較
毛筆書写技能検定1級第8問A・草書読み問題対策~書譜・十七帖・真草千字文の臨書をする、硬筆準1級の過去問を参考にする。
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毛筆書写技能検定1級第9問B(書道史):時系列で覚える・作者ごとに覚える、漢字で作者名を書く練習をする
硬筆書写技能検定1級:第10問B(歴史的仮名遣い)対策〜中学生・高校生用の古文の参考書を読む、過去問で誤りパターンを覚える

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