毛筆書写技能検定1級第3問・漢字の臨書対策~形臨に重点を置いて練習する。

毛筆書写技能検定では、準2級以上から「漢字の臨書」が出題されます。

準2級は楷書のみ(唐時代の4作品…孔子廟堂碑・九成宮醴泉銘・皇甫府君碑・孟法師碑)
2級は楷書・行書・草書(楷書は唐の時代のみ)
準1級・1級は、楷書・行書・草書・隷書が出題範囲に指定されています。
※準1級も隷書が出題範囲に入っていますが、実際に隷書が出題されたことは殆どないはずです。

さて毛筆1級でよく出題される臨書(手持ちの過去問で3回以上出題されている法帖)は、

・唐代楷書 顔氏家廟碑(顔真卿)、雁塔聖教序(褚遂良)

・北魏楷書 牛橛造像記、高貞碑、張猛龍碑、鄭文公下碑(鄭道昭)

・行書 枯樹賦(褚遂良)、集字聖教序(王義之)、争坐位文稿(顔真卿)、白楽天詩巻(藤原行成)、風信帖(空海)

・草書 十七帖(王義之)、書譜(孫過程)

・隷書 曹全碑、乙瑛碑、礼器碑、史晨後碑

逆に準2級や2級でよく出ていた「孟法師碑」「孔子廟堂碑」「九成宮醴泉銘」「蘭亭序」などはあまり出題実績がない。

以上の傾向から、準2級・2級と比べると「書き慣れていないとうまく形が取れない、やや難易度が高めの古典」がよく出題される傾向があると言えます。

さて第3問は何をどれだけ練習すればよいのでしょうか?

毛筆1級の受験生でしたら、最低でも「手びき(2019年以前)」や「臨書で学ぶ古典の美」に載っている古典の図版・手持ちの過去問の図版は一通り臨書(形臨)しておくことをお勧めしたいです。

何故かというと、漢字の臨書は公式系のテキストに載っている図版から出題されることが結構多いからです。

一通り臨書することで、出題範囲になっている古典・古筆も一目で網羅できますし、理論(書道史)対策にもなります。

なお、「孟法師碑」「孔子廟堂碑」「九成宮醴泉銘」「皇甫府君碑」「蘭亭序」「真草千字文」などは、1級ではあまり出題されませんが、これらについても、楷書と行書の基本練習として一通りやっておいて損はないです。

ただ、R4年度は隷書と楷書の出題がなかったことから、「R5-1では臨書か北魏系の楷書、どちらかが出題されるのでは?」と予想しました。

そのため、高貞碑、張猛龍碑、鄭文公下碑、雁塔聖教序、曹全碑、礼器碑は「書の古典シリーズ」 「テキストシリーズ」の書籍も使って臨書練習をしました。(実際、R5-1では曹全碑から出題されました)

臨書には、「形臨」「意臨」「背臨」がありますが、検定試験では「形臨」が望ましいとされています。

ですので、できるだけ手本どおり(問題用紙に印刷されている図版どおり)に書くことが求められます。

この検定はあくまで「書写技能検定」なので、あまりに癖のつよい、個性的な書きぶりは、良い評価を得られないようです。
そのような「作品」を創作する能力は、第5問の自由作品でのみ求められると考えても良いと思います。

(だからといって第5問も、あまりに奇抜すぎる書きぶり、個性や癖が強すぎるとあまり良い評価は得られないようです。そのような個性的な表現は書道としてダメなのではなく、検定試験の枠組みのなかでは評価しきれない、ということです。)

ただ、形臨といっても、図版と全く同じように半紙に再現するのは物理的に不可能ですし、図版と同じ形に書くことばかりにこだわりすぎて、線が慎重になりすぎるのは良くありません。筆の動きがモタモタすると、筆勢がなくなってしまうからです。

なので筆でいきなり書き始めるのではなく、一旦問題用紙に印刷されている図版をよく観察すること(漢字の書き順や筆脈を確認すること)が大事かと思います。

古典の図版は、一見すると変な形に見える字でも、よくよく観察してみると、ラインが揃っている箇所がいくつかあるからです。

練習でも、単に見たまま書くのではなく、「どこのラインを揃えると字のバランスが良くなるか?」を観察しながら練習するのが大事だと思います。

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