硬筆書写技能検定2級・準1級・1級の難易度差はどのくらいあるのか!?

漢検1級合格後、「1級は準1級の5~6倍(場合によっては10倍)の勉強が必要」と書いた記憶があります。

硬筆書写技能検定に関しては、準1級と1級の差が10倍なのではなく、2級と1級の練習量の差が約10倍と感じました。

私は硬筆は3級から受験したのですが、実際に練習した感触としては、
3級≦準2級<2級<<<<準1級<<1級

3級→過去問を一通りやれば普通に受かりそう(多少下手でも丁寧に書けば受かる)
準2級→3級と同じく(さすがに3級よりは上手じゃないとダメだけど)
2級→理論がちょっと難しくなってきた&楷書と行書をある程度綺麗に書けるようにならないと合格が難しそう。
準1級→えーと、草書体を自運で書けとな?一体何文字草書体を覚えないとダメなの?あと理論もオール記述式に変わるから、ここもちゃんと対策しないと合格できないぞ。
1級→準1級よりも採点基準が厳しくなるのね…あと草書の出題範囲が準1級よりも広いから、さらに草書体を覚えないとダメなんだな…(そりゃそうか)

こんな感じで、準1級から1級へのステップアップよりも、2級から準1級にステップアップする時の方が、ずっと難しくて抵抗感も大きかったです。

実際、2級の合格率は約50~55%程度と比較的高いですが、準1級の合格率は18~20%前後、1級は8~10%程度と、準1級で急激に難化するんです。

では、なぜ準1級で一気に難易度が上がるのかというと、

①草書の自運課題が出題される
②自由作品と言われても、どの課題を選べばいいか、どう書いたらいいのかよくわからない
③理論問題が記述式に変わる
④草書が読めない(書譜・十七帖・真草千字文)
⑤仮名の古筆の読み方がよくわからない
⑥書道史・書道用語を覚えなくてはいけない

など、新しい勉強がいくつか追加されるからです。

実技の第1問(速書き)・第3問(縦書き行書)・第4問(横書き楷書)は、2級と同じ出題形式。
第6問の掲示文は、横書きから縦書きに変わるだけ。

ですが、第2問は楷書・行書に加えて、草書体の自運が加わり、第5問は「自由作品」課題に変わります(2級の第5問はハガキの通信文を書く課題だった)。

まず、草書体を何文字くらい覚えなくてはいけないのか?
試験本番は、字典類を参照することはできませんから、手本なしで楷・行・草の三体を書けるように練習しなくてはいけない。

でも、令和の現代では、少なくとも小中高校の授業で、草書体の書き方を習う機会・覚えなければならない機会って殆どないじゃないですか。
よしんば高校で書道を選択をしていた人だったら、草書体を書く機会は何度かあったかもしれませんが、だとしても自運で草書体を書かされる試験は受けたことはないと思うんですよね。

なので実質的には、小学校で習う漢字(約1000字)の書き方を新たに覚えなさいと言われているような感じがしました。
事実、私の準1級対策の6割は、草書体のインプットに費やされましたし。

第5問は、和歌(仮名)・近代詩文(漢字かな交じり文)・漢詩の3つのうちから一つを選んで、自分の得意な書体で書くというもの。
まず、鉛筆で□の枠を囲み、その中で字の配置を決める。

私は漢詩を選択していたのですが、漢字といっても楷書・行書・草書、どの書体で書いてもOK。
でも、字の大きさや字間・行間の取り方、書体のチョイスなど、ある程度慣れないと、「書けって言われたから仕方なく書きました感」がプンプンした作品になってしまう(笑)

理論に関しても、高校生や大人で書道を習っている人ならば、書譜・十七帖・草書千字文などは見たことがあると思うんですよ。

だけどもっぱら硬筆しかやっていない人にとっては、草書の読み問題の図版を見たときに、「何これ?変な字ッ!!」と感じてしまうのではないでしょうか。また、仮名書道を習っている人を除き、「仮名の古筆」の読み問題対策も地味に大変だと思います。

例えばこれは平成19年第3回の1級過去問(高野切第一種)ですが、

これは「みののくに せきのふぢがは たえずして きみにつかへむ よろづよまてに」と読みます。

仮名書道を習っている人であれば、そんなに苦なく読めるけど、仮名書道を習ったことがない人にとっては、
何このクネクネした細長い字!こんなの読めない!」
「これがなんで【か(可)】って読むのか意味不明すぎる。」

などと感じてしまうでしょう。

私は書道教室で、2018年から仮名書道の練習と仮名課題にも取り組んでいたので、古筆を読む対策にそれほど多く時間を使わずに済んだ&仮名の臨書にもある程度慣れていた(毛筆準1級実技)からこそ、準1級のダブル合格が出来たと思っているくらいです。

仮名の読み・臨書、書道史問題で足を引っ張る心配がなかったので、硬筆と毛筆の準1級でネックになっていたのは、草書体を自運で書けるかどうかだけだったからです。

逆に、準1級と1級の難易度差をそれほど感じなかったのは、理論で「旧字体・書写体の書き取り」「歴史的仮名遣い」「添削」の問題が新しく加わる反面、実技の出題形式自体は準1級と同じだからでしょう。

第1問:速書き(準1級よりも10字程度増える)
第2問:楷行草三体(準1級は平易な草書体しかでないけど、1級はたまに難易度の高いものも含まれている)
第3問:縦書き(行書)(準1級とそれほど難易度差を感じなかった)
第4問:横書き(楷書)(こちらも準1級との差はあまり感じなかった)
第5問:自由作品(漢詩が10字→20文字に増えるなど、字数が増えるので、20文字に対応したレイアウトを組む練習が必要)
第6問:掲示文(問題文のバリエーションが増える)

当然、準1級に比べると採点基準が厳しくなるし、出題される草書体の範囲も広がる分、より深くて広い練習が必要になります。
ですが草書体のインプット量を増やすこと以外は、準1級から更に完成度を上げていく…という方向性で練習すれば良いので、そういう意味では2級→準1級の時よりは取り組みやすかったと思います。

こうやって改めて振り返ってみると、平成18年度から準1級が、平成30年度から準2級が新設されたのもなんか納得…という感じです。
だって2級の試験内容から1級って…いくらなんでもハードル高すぎでしょうコレ(笑)

<硬筆書写技能検定準1級対策ページへのリンク>

準備編
独学でも硬筆書写技能検定準1級・1級に合格するコツ
硬筆書写技能検定準1級:使用した問題集、お勧めペン字練習帳と書体字典
各問題ごとの対策・練習法
①・硬筆書写技能検定第1問(速書き)対策~正しい書き順の復習と、行書の練習を重点的に行う。時間を測って過去問を練習する。
②・硬筆書写技能検定準1級・第2問の出題傾向と対策〜草書はどれだけ覚えればいいのか?
②・硬筆書写・毛筆書写準1級対策:草書体の練習だけで練習時間の6割を費やした理由
②・硬筆書写技能検定準1級&1級・第2問で草書体が書けない時の対処法~知ってる漢字を組み合わせて書く、行書を草書風に崩して書く(絶対に空欄のまま答案を出さない!)
硬筆書写技能検定第2問(3級・準2級・2級・準1級・1級)学年配当別の出題割合を比較してみた!
③・硬筆書写技能検定第3問(縦書き・行書)対策〜連綿は入れられるなら入れたほうが映えるけど、無理に入れなくてもいい
④・硬筆書写技能検定第4問(横書き・楷書)対策〜悪い評価がつく人が少ないからこそ、確実に評価4以上は取れるようにしたい
⑤・硬筆書写技能検定準1級・第5問(自由作品):漢字かな交じり文ではなく漢詩を選んだ理由
⑥・硬筆書写技能検定第6問(掲示文)~コピックを使うなら本番までに十分慣れておいたほうがいい(決して万人向けのペンではない)
⑦・硬筆・毛筆書写技能検定準1級:旧字体・書写体対策~硬筆2級のドリルを使って書き取り練習をする
⑧・硬筆書写技能検定準1級・1級 第8問B:古筆(仮名)対策〜よく出る変体仮名の読み方を覚える。

<硬筆書写技能検定1級対策ページへのリンク>

準備編
硬筆書写技能検定1級で使用した教材・書籍・筆記用具
独学でも硬筆書写技能検定準1級・1級に合格するコツ
硬筆書写技能検定1級対策:書体字典検索の時間を短縮するために工夫したこと(excelにデータを入れる・常用漢字の順番に並べ替える、等)
各問題ごとの対策・練習法
①・硬筆書写技能検定第1問(速書き)対策~正しい書き順の復習と、行書の練習を重点的に行う。時間を測って過去問を練習する。
②・硬筆書写技能検定準1級&1級・第2問で草書体が書けない時の対処法~知ってる漢字を組み合わせて書く、行書を草書風に崩して書く(絶対に空欄のまま答案を出さない!)
②・硬筆書写技能検定1級・第2問対策 草書体はどこまで覚える必要があるのか?
②・硬筆書写技能検定第2問(3級・準2級・2級・準1級・1級)学年配当別の出題割合を比較してみた!
③・硬筆書写技能検定第3問(縦書き・行書)対策〜連綿は入れられるなら入れたほうが映えるけど、無理に入れなくてもいい
④・硬筆書写技能検定第4問(横書き・楷書)対策〜悪い評価がつく人が少ないからこそ、確実に評価4以上は取れるようにしたい
⑤・硬筆書写技能検定1級:第5問(漢詩)対策~書体はどれでもよいけど、旧字体と書写体を織り交ぜて書くと味が出る
⑥・硬筆書写技能検定第6問(掲示文)~コピックを使うなら本番までに十分慣れておいたほうがいい(決して万人向けのペンではない)
⑦・硬筆書写技能検定1級:第7問AB(旧字体・書写体)対策〜双方に跨って出題される漢字に要注意
⑧・硬筆書写技能検定1級・第8問A(草書の読み)対策~直近の過去問と硬筆2級のドリルの字形でインプットする
⑧・硬筆書写技能検定準1級・1級 第8問B:古筆(仮名)対策〜よく出る変体仮名の読み方を覚える。
⑨・硬筆書写技能検定1級:第9問A(添削問題)対策~教育漢字の楷書体を重点的に練習する
⑨・硬筆書写技能検定1級:第9問B(書道史)対策~ダミー選択肢の筆者も覚える、図版と一緒に覚えると効率がいい
⑩・硬筆書写技能検定1級:第10問B(歴史的仮名遣い)対策〜中学生・高校生用の古文の参考書を読む、過去問で誤りパターンを覚える

コメント

  1. MT より:

    今日は。
    3級試験と準2級試験の間に、あまり差がないのは珍しいですね。

    >準1級から1級へのステップアップよりも、2級から準1級にステップアップする時の方が
    ずっと難しくて抵抗感も大きかったです。
    硬筆書写技能検定では、そのようなことがあるのですね。

    私は授業以外で書道を習った経験はありませんが、
    書道史には興味があります。

    ところで、私は今月16日に『実用数学技能検定準2級』を受験する予定です。
    こちらは3級試験と準2級試験の間にも雲泥の差があります。
    しかも、第2次ベビーブーム世代は、私のように大学受験時に文系を選択した場合、
    高等学校の授業で『確率・統計』を履修することはありませんでした。、
    ところが、今の『数検準2級』では容赦なく出題されるので、非常に厄介です。

    • miwa@管理人 miwa@管理人 より:

      MTさん
      そうですね。硬筆書写の場合、3級と準2級では出題内容がそれほど変わらない(使われている漢字の難易度が変わるとか、理論の草書読み問題が難しくなる程度)なので、合格率もそんなに違わないですね。
      ただ正直いうと、毛筆は3級と2級の間に準2級を作って正解だと思うけど、硬筆はぶっちゃけ準2級はなくても良いのでは?と思わなくも…ない。
      数学の方は、中学3年でならう数学と、高1〜2で習う数学は難易度が違うわけですから、結構大変だと思います。
      英検の方も、途中で準2級ができたのは、3級(中3相当)と2級(高校卒業)の間に大きな差があったからこそですし。

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