硬筆書写技能検定1級:第5問(漢詩)対策~書体はどれでもよいけど、旧字体と書写体を織り交ぜて書くと味が出る

第5問は、短歌(仮名)、現代詩(漢字かな混じり文)、漢詩(漢字)の3つのうちから一つを選んで書く問題です。

※miwa注:この自由作品課題に関しては、私はC漢詩しか練習をしていないので、仮名・現代詩の方はわかりません。
仮名または現代詩で受験しようと考えている方は、別の方の練習法を参考にしてください。

この自由作品については、書体の指定はありません。
ですので、最初は準1級の時と同様、行書体と草書体を織り交ぜて書いていました(これはほとんど行書ですが、診断テストでこれを提出したところ評価4がもらえました)↓

ですが、行草体は、毛筆(条幅)だとそれなりに纏められるのに、硬筆で行草体を紙に書いても、なんか今一つしっくりこない…。
多分毛筆の場合は、墨の潤渇や字の大きさで変化をつけられるけど、硬筆は線の太さがほぼ一定だから、というのもあるかもしれない。
かといって今更仮名や漢字かな交じり文に鞍替えするのも面倒だしな〜。

あとこれまで受けてきた書写能力診断テストでも、行書や草書の字形に対する指摘はいくつかありましたが、楷書体で指摘されたことは一度もなく、第4問はどの回でも合格点をクリアできている。

だったら減点されるリスクの大きい行書・草書よりは、少なくとも字体での減点されるリスクが低い楷書体の方が良いかもしれないと考えました。

昭和50年代の過去問を見ると、14文字や28文字の漢詩が出題されたこともあるようですが、現在では20文字の五言絶句が出題されています。
その点に関しては、約40年分の過去問を見ても、変化はないようでした。

漢詩20文字を書く場合は、5文字ずつ4列で書いてもよいし、3行(7文字・7文字・6文字など)に割り付けて書いても良いようです。

ただ、回答用紙のサイズを考えると、2行(10文字ずつ)にすると、縦長になる(左右のスペースが空きすぎる)気がするので、4行または3行に分けて書くのがちょうどよいと思います。

この問題はレイアウト(余白や行間、字のサイズ)が得点を大きく左右するので、4行・3行をどのように書けばバランスが良くなるか、いろんなパターンを試してみて欲しいです。(※画像では漢字を書き出す位置の目安としていくつかマークしてある箇所がありますが、提出するときは枠線だけにした方が良いと思います。)

あと、行書・草書で書くのをやめたのは、第2問と比べると、常用漢字外からの出題割合が増えるからです。
例えば、碧、啼、坐、已、邨、樵、暝など。
それらの草書や行書をいちいち調べるのも面倒くさいと思ってしまったw

最初は第2問対策を兼ねて、これらの草書体を覚えようと頑張ってはみたのですが、調べていくうちに、第2問と第5問(漢詩)の草書体はそれほど出題傾向が被っていないこと(少なくとも第2問では絶対に出なさそうな字が結構多い)、1月試験では第2問の過去問の草書体を覚えるだけでも精一杯だったので、1月試験対策ではここまで手を広げられないと判断したからです。(もし1月試験で不合格になってしまったら、その時は6月試験に向けてやろうと思っていました。)

あと第5問の漢詩を楷書で10~20パターン練習した後に感じたことは、この自由課題の漢詩は、白居易、王維、李白など、唐の時代の詩がよく出題されているのだから、常用漢字よりも旧字体や書写体の方が、漢詩の世界観や雰囲気をより表現できるのでは?ということです。

もっとも、最近の試験問題は、旧字体のあるものは極力旧字体で問題文が印刷されていることが多いので、旧字体が印字されている漢字は、そのまま旧字体で書けばいいでしょう。

また「Cの漢字は書写体に変えてもよい」との指示があります。
もちろん、書けない字を無理して書く必要はありません。
書けないなら書かなくていいんです。
問題文の指示は「書写体に変えなければならない」ではなく、「書写体に変えてもよい」だからです。

私の場合は、理論第7問や「手びき」に載っている書写体が出てきたら、理論問題の対策も兼ねて、その漢字については書写体に置き換えて書く練習をしました。
例えば、「処(處)」「所」「安」「過」「海」「流」「紫」「能」「陵」「歴」「楼(樓)」「和」「鳥」「域」「帰(歸)」「景」「遠」などです。

また、書検ニュース第117号(令和4年1月20日号)の中央審査委員会レポートによると、第5問自由作品に対する指摘事項として、

a・和歌は、変体仮名や連綿を効果的に(変体仮名や連綿をどのように使用し効果的に表現するかが重要です)

b・現代詩の選択がとても多かった(詩を選択して書く方が多いです。構成に工夫して書く必要があります)

作品としての工夫や意図を持って書いてほしい(書体の統一や作品としての意図などの工夫が必要です)

とありました。

116号(令和3年8月1日号)では「構成が不十分なためわくの位置が不安定になった」との所感がありました。

ちなみに書道漫画「とめはねっ!13巻」にも、日野ひろみ部長が仮名と短歌、漢字かなまじり文について、こんなことを言ってるシーンがありました。
私が漢詩に対して感じたことは、ひろみ部長の変体仮名に対する違和感と似ているかもしれないと思ったので、参考として紹介したいと思います。↓

「以前、現代の短歌で「かな」の創作作品を書いたでしょ。あの作品では少し失敗をしてしまったけれど、実はそれ以外にも現代文の短歌に「変体がな」をあてて書いている時、なんだか私の中に違和感が残ったの。現代の作者が現代の読者に読まれることを前提につくった歌を、読めないように直すなんて変だなって。」
「やっぱり現代短歌より昔の和歌のほうが「変体がな」をつかってもしっくりくると思うの。例えば、「花の色は移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに」とかね。」
「だから「変体がな」をつかうのなら、「変わってしまった」より「移りにけりな」、「長雨の間に」より「ながめせしまに」という文体のほうが、違和感がないと思うの。感覚的なものかもしれないけれど。」
「でも大江くんが今度、書こうとしている「漢字かな交じりの書」は逆に現代文のほうがピッタリだと思う。「漢字かな交じりの書」は、感動が伝わらなくてはいけないのだから」
(「とめはねっ!」13巻P21~22参照)

最も、私が「漢詩を書くなら旧字体や書写体の方が味があるのでは?」と感じるようになったのは、書道教室の課題では、旧字体や書写体に置き換えられている手本が多く、条幅や半紙を書き慣れていくうちに、旧字体や書写体でかいた方が作品の雰囲気が良く感じるようになったから、というのはあると思います。書道を習い始めたとき、書写体の手本を見て「何なのこの字?こんな漢字あったっけ?」とものすごく違和感を感じていたからです。

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準備編
硬筆書写技能検定1級で使用した教材・書籍・筆記用具
独学でも硬筆書写技能検定準1級・1級に合格するコツ
硬筆書写技能検定1級対策:書体字典検索の時間を短縮するために工夫したこと(excelにデータを入れる・常用漢字の順番に並べ替える、等)
各問題ごとの対策・練習法
①・硬筆書写技能検定第1問(速書き)対策~正しい書き順の復習と、行書の練習を重点的に行う。時間を測って過去問を練習する。
②・硬筆書写技能検定準1級&1級・第2問で草書体が書けない時の対処法~知ってる漢字を組み合わせて書く、行書を草書風に崩して書く(絶対に空欄のまま答案を出さない!)
②・硬筆書写技能検定1級・第2問対策 草書体はどこまで覚える必要があるのか?
②・硬筆書写技能検定第2問(3級・準2級・2級・準1級・1級)学年配当別の出題割合を比較してみた!
③・硬筆書写技能検定第3問(縦書き・行書)対策〜連綿は入れられるなら入れたほうが映えるけど、無理に入れなくてもいい
④・硬筆書写技能検定第4問(横書き・楷書)対策〜悪い評価がつく人が少ないからこそ、確実に評価4以上は取れるようにしたい
⑤・硬筆書写技能検定1級:第5問(漢詩)対策~書体はどれでもよいけど、旧字体と書写体を織り交ぜて書くと味が出る
⑥・硬筆書写技能検定第6問(掲示文)~コピックを使うなら本番までに十分慣れておいたほうがいい(決して万人向けのペンではない)
⑦・硬筆書写技能検定1級:第7問AB(旧字体・書写体)対策〜双方に跨って出題される漢字に要注意
⑧・硬筆書写技能検定1級・第8問A(草書の読み)対策~直近の過去問と硬筆2級のドリルの字形でインプットする
⑧・硬筆書写技能検定準1級・1級 第8問B:古筆(仮名)対策〜よく出る変体仮名の読み方を覚える。
⑨・硬筆書写技能検定1級:第9問A(添削問題)対策~教育漢字の楷書体を重点的に練習する
⑨・硬筆書写技能検定1級:第9問B(書道史)対策~ダミー選択肢の筆者も覚える、図版と一緒に覚えると効率がいい
⑩・硬筆書写技能検定1級:第10問B(歴史的仮名遣い)対策〜中学生・高校生用の古文の参考書を読む、過去問で誤りパターンを覚える

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