日商簿記1級(商業簿記・会計学)の出題傾向

過去問題集はただ解けるようにするだけではなく、同時に出題傾向を分析すること(どういう論点がよく問われるのか・どの程度広く・深く理解しなければいけないかを、自分なりに感じ取ること)がとても大切です。

今回は商業簿記・会計学について書きます。

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日商簿記1級(商業簿記)の出題傾向


商業簿記は、主に「決算整理後残高試算表」「財務諸表(貸借対照表・損益計算書)」「本支店会計」「連結会計」が出題されます。

ここ最近は、「決算整理後残高試算表」または「財務諸表(貸借対照表・損益計算書)」を作成させる出題が多いと感じました。

連結会計は、110回~134回(2013年)くらいまでは、商業簿記で出題されることが多かったのですが、会計学の方で出題されることが増えています。
(2018年の149回試験で、久しぶりに商業簿記で連結会計の大問が出題されました)

逆に、2・3級でよく出題されていた「精算表」の作成問題は、第113回(連結精算表)以降、出題実績はありません。

1級の商業簿記では、3回~9回前(つまり前年~3年前)の会計学で出た問題が、商業簿記の決算整理仕訳問題でリメイク出題される傾向があります。

例)不動産の流動化:117回会計学→125回商業簿記
資産除去債務:126回会計学→129回商業簿記→137回会計学(見積変更・増額)→141商業簿記(見積変更・減額) 
減損会計(共用資産あり):125回会計学→134回会計学→140回商業簿記
工事会計(工事進行基準):143回会計学→146回商業簿記(ソフトウェアの受注制作)

また、決算整理仕訳のうち、2~3問は、計算に時間のかかる問題が出るのもデフォです。

特に、「商品」に絡む問題では、「計算に時間のかかる問題」や「引っ掛け問題」が多く出題されています。

例)
第119回・第123回「割賦販売(回収期限到来基準)」
第120回「不慣れな会計係が間違って処理した委託販売の訂正」
第135回「割賦販売(取戻商品・割賦売上利益戻入&控除)」
第138回「売価還元低下法(※仕入戻し額の処理が引っ掛け)」
第140回「棚卸資産の評価方法を総平均法→先入先出法に変更」
第141回「返品権付条件の販売、売上原価の推定」
第144回「委託販売、売上債権・仕入債務からの売上高推定・仕入額推定の複合問題」
第147回「移動平均法、本支店会計(在外支店)」
など。

もちろん、商品系の問題以外にも、リース会計・減価償却費・有価証券・貸倒引当金・税効果会計などからも、計算の手間がかかる問題が3~4問程度出題されます。

なので、結局のところは最初から最後まで、一通り解き終わる頃には50~60分かかってしまうのが1級商業簿記の特徴、ともいえます。

試験時間は、商業簿記・会計学の2つをあわせて90分なので、バカ正直に商業簿記の1問目から解いていくと、会計学の計算問題が解ききれないまま時間が終わってしまう可能性も十分にあります。

「これは解くのに時間がかかりそうだな…」と思ったら、その問題はいったん飛ばして、まずは会計学の理論問題・個別論点の計算問題、確実に得点できそうな単純な仕訳問題(経過勘定や法人税など)から解いていくのがいいでしょう。
試験の序盤で、複雑な問題に時間を取られすぎないことが大事です。

日商簿記1級(会計学)の出題傾向

会計学は、理論問題と、計算問題が出題されます。
ここ数年の傾向では、大問3つのうち、理論が1問、計算が2問というパターンが多いです。

ちなみに全経簿記上級の会計学理論問題では、小問が10問(○×正誤判断と、×の場合は正しい語句等を記述する問題)と、記述式の理論問題(○○について説明しなさい、的な問題)が出ます。

ところが日商簿記1級の会計学理論問題は、○×問題、穴埋め(記述or多肢選択)問題、記述、語群選択、四択と、その回によって出題パターンが異なるので、どの角度から問われてもよいように対策する必要があります。
そこは全経上級と比べると少し面倒くさいです。

とはいっても、市販の理論系問題集やテキストなどを使って勉強すれば、理論問題については、概ね問題なく得点ができます。

逆に、会計学の計算問題は、短いサイクルで同じ論点が連続して出題されるケースは少ないです。

しいて言えば、過去30回のデータの範囲では、減損会計・リース会計・資産除去債務・連結会計・事業譲渡系などの問題が複数回出題されているかな?という程度です。
次にどのような論点が出るのかを予想するのはなかなか難しい。

ただ、一見すると全くの新問のように見える問題であっても、よくよく問題文を読めば、商業簿記(会計学)で出題実績のある論点の応用問題であったり、理論で出題されている論点の計算問題バージョンだったりすることがわかります。

また、新問のように見える問題であっても、商業簿記・会計学の過去問の既存知識があれば、小問の1~2問目までは問題文に従って計算していけば、部分点が稼げるように問題が作られています。
(例:第138回の連結包括利益計算書作成、141回の株式交換と事業分離のミックス問題、143回のれんをS社の修正仕訳で計上する、146回のオプション資産の時間的価値、第147回の共同支配企業など。)

なので、商業簿記・会計学ともに、まずは過去問題で出題実績の仕訳は全て解けるようにしておくことを前提に、更に市販の練習用の問題集やポケット版仕訳集を使って、過去問にはない仕訳問題も、基本問題レベルでいいから一通り練習しておくといいでしょう。
そうすれば、少なくとも基準点(10点)割れすることはないはずです。

「理論」と「仕訳」をあなどってはいけない

日商簿記1級の会計学では理論問題が出題されます。
(※大問3つのうち1~2問が理論問題です)
また、工業簿記or原価計算でも、「原価計算基準」にもとづいた理論問題が出題されます。

とはいっても、会計学の理論問題については、市販の1級テキストか、理論用のポケットテキストに載っている事項をマスターすれば、十分足ります。
私は最初はネットスクールの「理論ナビ」を使っていましたが、ちょっと版が古いので、これから新しく購入する人は、TACか大原の理論集を買うのがいいと思います(2019年2月現在)



理論集と同様に、ポケット版の仕訳問題集も、隙間時間でも使える貴重なアイテムです。

ちなみに自分の場合は、最初はTAC版の仕訳問題集を使っていました。
(※勉強を再開した2017年当初に売っていたのは、この1冊しかなかったので、選択肢がなかった…)。

ただ2017年の12月に、ネットスクールからも仕訳問題集が発売されたので、こちらも買ってみました。

両方とも使ってみたところ、ネットスクール版の仕訳集のほうが、(その当時)新しく発売されたばかりということもあってか、最新の過去問の出題実績が反映されている(現在の出題傾向に沿っている)と思いました。
電車の中で読むならTAC版の方が使いやすいかなーとは思いますが、解説はネットスクール版の方が親切だなという印象をうけました。

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ここに載っている仕訳の例題が解けるようになれば、過去問にないパターンの仕訳・計算問題が出たとしても、小問の問1~問2くらいはどうにか確保できるようになります。

自分としては、どっちか1冊があればいいと思いますが、両方とも買ってもいいと思います。
どっちか気に入った方をメインとして使って、もう1冊は載っていないものをカバーする(補助的に使う)という形にすればいいのです。
逆にどちらの仕訳集にも載っていないような、マイナーな仕訳問題が出たときは、それは捨て問と判断することもできます。

そういう意味ではポケット版の仕訳集は「出題実績のない(最新版の過去問題集に載ってない)仕訳問題はどこまで覚えればよいか?」という目安としても使えると思います。

参考:企業会計基準(財務会計基準機構)

オンライン企業会計原則

原価計算基準

聞いて覚える「原価計算基準」
聞いて覚える「原価計算基準」

・工業簿記・原価計算へ
前回の商業簿記・会計学編に続いて、工業簿記・原価計算の出題傾向について書きます。

・ 日商簿記1級・独学で合格する勉強法(総論)に戻る
日商簿記1級の受験記録・勉強法(2017年1月~2018年11月)をまとめました。 ※ここが1級勉強法の「まとめページ」になります。 各記事を更新したら、リンクを随時追加していきます。

参考:テキスト・問題集・スクール講座へのリンク
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サクッとうかる日商簿記1級(テキスト・トレーニング)12冊フルセット
ネットスクール 日商簿記1級web講座
TAC 日商簿記1級 スッキリわかるシリーズセット
TAC 日商簿記 独学道場 1級【ロングラン】フルパック
TAC 日商簿記1級通学・通信講座

コメント

  1. MT より:

    今晩は。
    分かりやすい解説を有難うございます。

    >過去問題集はただ解けるようにするだけではなく、同時に出題傾向を分析すること(どういう論点がよく問われるのか・どの程度広く・深く理解しなければいけないかを、自分なりに感じ取ること)がとても大切です。
    私は、全経簿記を中心に勉強しておりますが、全く同じことが言えますね。
    3月2日まで、全経ホームページに「第193回簿記能力検定試験」の
    試験問題と解答がPDFファイルで見られるようになっております。
    私が受験し、結局は13点不足して、不合格となってしまった、
    全経簿記2級(商業簿記)は、第2問が曲者です。

    ちなみに、第193回の全経簿記2級(商業簿記)では、
    第3問において、日商簿記3級試験との違いが顕わになっています。

    >「これは解くのに時間がかかりそうだな…」と思ったら、その問題はいったん飛ばして
    私も実践しております。

    >「仕訳」をあなどってはいけない
    本支店会計の勉強をしていて、「その通りだな」と思いました。

    以上です。

    • miwa@管理人 より:

      >MTさん
      全経2級は残念でしたね。
      問題を拝見したところ、日商簿記3級+本支店会計という印象を受けました。
      1級は商業簿記が最初のページにあり、しかも計算に手間のかかる商品の問題が最初の方にあるんですよ。
      日商2・3級でもそうかもしれないけど、2・3級の場合は最初に個別の仕訳問題や伝票などの問題があり、精算表や財務諸表は試験時間の後半に解くのであまり問題ないと思います(もちろん時間が足りないときは、経過勘定や法人税などを優先して解答したほうがいいです)。
      でも1級では、バカ正直に商業簿記の最初の方の問題から解いていくと、そこで時間を使ってしまうため、まずは会計学の知識問題から解いていく、ということです。
      知識問題の○×や用語記述だったら、知っていれば1分足らずですぐに解けちゃいますので。

  2. MT より:

    試験問題をご覧になっていただき、有難うございます。
    解答を見たところ、ケアレスミスが相次ぎ、
    少なくとも8点分は損していたことが判明しました。

    >でも1級では、バカ正直に商業簿記の最初の方の問題から解いていくと、
    そこで時間を使ってしまうため、まずは会計学の知識問題から解いていく、
    ということです。
    miwaさんがおっしゃるように、どの問題から解くのか、
    ということは、重要だと思います。、
    それが、「どのようにしたら点数を稼ぐことができるのか」
    ということに繋がっていくのではないか、と思いますので………。

    私の場合、借方貸方合計の検算をせずに、
    半ば強引に数値を埋めてしまうという状態が続いています。
    検算をして数値が合わないのであれば、そこは後回しにして、
    点数を取りに行った方が得策だからです。

    • miwa@管理人 より:

      MTさん
      簿記は一つのミスが連鎖するのが怖いんですよね。
      差し出がましいようですが、全経2級や日商3級では、精算表にしろ残高試算表にしろ、合計金額の検算ができるようになる(貸借を一致させるところ)まで勉強した方がいいと思います。
      1級は合計金額まで配点がこないことが殆どですが、日商簿記3級では最後の合計金額にも配点があるからです。
      (自分が日商簿記3級を受けたときも、保険料の経過勘定の計算を間違えたせいで、合計の金額も間違えてしまい、2点+2点=4点ロスしてしまった…。)
      貸借が合わないということは、どこかでミスをしているのは確実なのですから、誤りを訂正するチャンスと考えて検算をするようにしたらいいですよ。