今年出品した作品は、「疾風勁草(しっぷうけいそう:疾風に勁草を知る)」とは、その人の真価は苦境に立って初めてわかることのたとえ。
「疾風」は激しく勢いの強い風、「勁草」は強い草のことで、激しい風が吹くことで、初めて強い草がどれかわかることから来ています。
この四字熟語を知ったのは、漢検1級の勉強をしていたとき。
字自体はそんなに難しい感じがしないのに1級配当なのは、「勁」の字が1級の対象だからですね。
旦那は「miwaの今年の作品は【疾風怒濤】なんだね」と言っていたが、怒濤は一体どこから持ってきたw
「条幅の3/4サイズで横書き、書体は行書体か隷書体で、疾風の2文字は強風っぽく、勁草の2文字で強い風に耐える強い草を表現したい」
とお伝えして、私が書いた書稿を渡したら、こんな手本がやってきました(この手本を書いてくださったのは私の先生の先生です)。
ただ、よいお手本をいただいたとしても、自分がそれを書けるか…というと、自分の書道の実力が伴っていないと、「良さ」や「味」を表現しきれないのがもどかしい。
結局は月例課題の条幅を書くときと、同じくらいの枚数を練習して、ようやく書稿ができました。
自分で書稿を作った時、私の手持ちの書体字典には勁の字の隷書体が載っていなかったため、へんとつくりをそれぞれ別の字から引っ張ってきて組み合わせましたw
書稿を作成したら、薄い紙(和紙っぽいトレーシングペーパー)に籠字をとります。
増粘剤で紙を板に貼ります。
概ね半切3/4サイズだから、これは二人がかりでやります。
概ね1~2時間くらいすると、増粘剤が乾いて、表面が白くなります。ここから彫りに入ります!
今回使用する板のサイズは横95センチ・縦30センチなので、額に入れなくても結構大きいです!
でも展示会場の広さ(東京都美術館・新国立美術館)や、ほかの部門の作品のサイズを考慮すると、毎日展では、ある程度大きいサイズの作品じゃないと埋没してしまいます。
なので、むしろもうちょっと大きくても全然問題ないんです。
でもこれよりも大きいサイズになったら、自宅で作業する&教室に持っていくのが辛いw
このサイズでさえ、教室からこの板を持ち帰るのはとても大変だった…(遠い目)
最悪なことに、その日は結構な大雨だった_| ̄|○
ただ、サイズの問題だけならば、板をもう少し小さ目のサイズにして、額に入れれば、大きさの問題はクリアできるかなという気もします。
捨彫り
まずは漢字の周りを軽く彫ります。
そして背景も軽く彫ります。
この段階で、背景の方はある程度深く彫ってもよいそうです(その方が本彫りが楽になるから)
本彫り。
漢字の線に対して鑿を深く入れていきます。
背景も深く彫っていきます。
ある程度深く彫り終えたら、4センチ幅~3センチ幅の鑿を使って、背景全体をもう一度彫ります。
バックのタッチは、横から吹き荒れる強風をイメージして彫っています(写真は縦になっちゃってます&紙が剥がれてきたので剥がしてしまった)。
ここまできたら次は色塗りに入れます。
今回の作品は、板こそ大きいですけど、4文字だけですし、字のサイズも大きめだったことから、実は意外と掘りやすかったです。
細かい掠れ部分の処理に関していえば、今年の日刻展に出品した「鶏口牛後」よりもやりやすかった気がします。
とはいえ、彫る面積が広く、字も大きいですので、漢字の部分はある程度の深く(8ミリ~9ミリ程度)彫らないと見栄えが良くない。
細かい箇所の処理はやりやすくても、単純に彫る時間がかかりました。
1発でスパッと8ミリくらい刃を深く入れられたらいいんだけど、私はそこまで腕の力が強くないので、漢字の線に沿って縦に刃を入れる→それに対して周りを彫る
これを2~3回繰り返すハメになりました。
ただこれだと、断ち切りの断面に横線が複数入ってしまうので、断面が汚くなるし、色塗りの時にも余計な手間がかかってしまいます。
なので、もう一度垂直にノミを入れなおして、断面をきれいにしてやりました(全部が全部綺麗になったわけではないけど…多少はマシになってる…はず)。
また、素手で鑿を長時間持っていると、鑿を握っている左手の指と、槌を持つ右手が痛くなります。
なので、細かい掠れなどを処理するときは素手でやるけど、背景を太鑿でガンガン彫る時にはゴム付きの軍手をハメてました。
あと、2~3時間連続で鑿と槌を叩いていると、腕から肩にかけて疲労が蓄積しますし、結構音もうるさいです…。
小さい作品(日刻展のサムホールサイズ)だと、使用する鑿はあまり大きくないし、作業時間も短いのでそれほど気にならないです。
でも今回のような大きい作品では、3~4センチ幅の大きい鑿を使ったり、深く彫らなくてはいけない分、発生する音も大きいです。また、製作期間も長いので、それが長く続くと確実に近所迷惑になります。
そこで、騒音と腕の疲労軽減対策用に、こんなのを購入してみました↓
ショックレスハンマーです。
鑿を打つ音が完全になくなる…というわけではないですけど、ゴムハンマーにくらべると、右腕にかかる負担や衝撃は確実に減った気がします。
また、作業テーブルの下と壁に、マットや低反発クッションなどを挟んだり、テーブルの上にゴムシートを敷くなど、発生する作業音・振動をできるだけ減らすように工夫しました。
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