東村アキコ「かくかくしかじか⑤」 『描け』という言葉の重み

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東村アキコの新刊・「かくかくしかじか 5巻」を読んでいたら、「東村センセイ、良いこと言うね~!!」と大きく頷いてしまった箇所があったので、引用・紹介したいと思います。

日高先生の葬式に遅れてやってきた、教え子の一人の石崎君(仮名)

先生の葬儀が終わり、かつての日高絵画教室を借りて最後のお別れ会をやっている最中に、東村さんを廊下に呼び出して「オレ漫画家になろうと思ってるっちゃけど」と真剣に(笑)尋ねるんですね。

でも東村さんのお答えは、

「そう いいじゃん!頑張れ!!じゃ!」

「ちょっ待って待って まだ話終わっちょらん」
「何だよもう なりたいならなりゃいいさ」
「いや どうやったらなれると?」

「ハァ!?バカか そんなもんアンタ…とりあえずマンガ描いて出版社の新人賞に送ればいいんよ ハイおわり!!どうせまだ一作も描いたことないんやろが」

「ちょ待って待って オレが今考えてる話を聞いて 全世界にたくさんいる特殊能力を持ったヒーローが終結して…」
「いや 私に今その説明されても いいじゃん描けばいいよそのX-メンみたいな話 好きにやんなさいよ」

「いや だから 俺漫画家なれると思う?」
「知らねえよ」

「で そのヒーローたちが悪の組織に能力を潰され…」
「わかったよわかったからあ゛ーも゛ー マンガが完成したら読んであげるから!私のメールこれ!ここに連絡しな!」

「描け」
自分に酔ってる夢見るユメオ君の、夢という名のただの「妄想」を容赦なくブッタ斬る、なんてシンプルかつ的確な回答!胸がシビれましたわwww

もしこの石崎君(仮名)が漫画家になれていたとしたら、はるな檸檬(※ZUCCA×ZUCAの作者)のように、作中で何らかの形で紹介していると思うので、彼のX-メン物語は脳内で完結したまま終わったのでしょう。

案の定、葬儀の半年後に彼から「描けなかった」というメールが来たそうです。
まぁそうだろうねwww

そうだよ、本当に漫画家になりたかったら、自分が漫画家になれる可能性があるのかどうか知りたければ、とりあえず脳内にあるX-メンみたいな話()をとりあえず描いてみるしかないよね(笑)

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個人的に、石崎君(仮名)の脳内X-MEN妄想物語以外にも、①~⑤通してこの作品でツボにハマったポイントは、

・ダウジングでセンター試験8割突破(1巻101P)
・カレールーの箱の裏に忠実にカレーを作る金子さんと、それを絶品という男子たち(2巻118P)
・ノストラダムスの大予言の賭け代金150万を払えと延々と言い続ける日高先生(2巻33P、56P)
・初投稿作をHitecの水性ボールペンでたった3日間で描きあげた筆者(3巻80P)
・OBのヤンキーどもを投石で追い払う日高先生(4巻93~95P)
あたりですね(笑)

そして、改めて第1巻を読み返してみると、20年間で、「夢見る夢子チャンな高校生時代」と「売れっ子漫画家になった現在」で、思考回路が180度真逆に変化しているのがとても興味深いです。

第1巻第1話の高校生時代

その頃の私の人生設計
東京の美大に現役合格→在学中に華麗に漫画家デビュー→大学の学費を漫画の原稿料で払って親戚の人達とかに褒められる→大学卒業と同時に結婚(相手は豊川悦司 マンガが実写映画化した時に出演したのが縁で)→仕事は時々読み切りを描く程度にして 家庭を一番に考えた幸せな生活を送る

完璧な人生設計じゃ… 美大は勉強できんでも絵さえ上手きゃ入れるから…
そんで美大行けばもっともっと絵が上手くなるわけやから…
そんなん あっとゆーまに漫画家デビューじゃ…

それが5巻最終話では

(石崎君に対して)でも私には 描けないお前の気持ちもよく分かるよ
お前もあの時 教室やめずに先生にもっとガッツリ習ってたら
あの竹刀でバシバシぶっ叩かれながら描いてたら
もしかしたら描ける人になってたかもしれないよ
なんて そんなこと言ってんのって時代遅れかな
根性論とか 体育会系のそういうのって もう古いかな

これからも描き続けるよ だって描くしかないじゃん
そのために生まれてきたんだもん
絵を描く人間はそのために生まれてきたんだから
下手でもなんでも描くしかないよ
ずっと 死ぬまで

1巻~5巻までを続けて読むと、「エキセントリックな芸術家の先生と出会って、デッサンをしごかれて美大に合格しました、漫画家になりました」という単純な自伝ではなく、「夢をかなえるためには、何が必要なのか」を示唆していると思います。

何か夢や目標があるのなら、それを妄想するだけじゃなくて、日々の生活の中で、現実的かつ具体的な行動をどれだけ積み重ねられるかが大事なのだと思いました。

これって、普段自分がやっている資格・検定試験やブログだって同じだよなと思う。

いくら効率的な勉強法を知っていようが、いい教材を持っていようが、どんだけ目標が高かろうが、日々の勉強を積み重ねて、試験本番で合格点をとらないと試験には合格できません。

ブログだって、pv数を増やしたかったら、1件でも多く記事を書かないとpv数は増えません。
記事も少ない、つまらないブログにSEOを利かせても効果はないしね。

漫画家に比べれば小さな世界かもしれないけどね(苦笑)

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コメント

  1. Suica割 より:

    とにかく、もの見たい。
    話はそれからだ。
    非常に納得出来る話です。
    描いた事は無いから、基礎的な描き方について知りたい。
    とかなら、力を貸したでしょう。
    ただ、構想の話をされても、良いか悪いかわかりません。
    簡単なラフ程度だろうが、シナリオのみだろうが形にしてくれたら、東村先生はきちんと見てくれたと思います。
    まずは形にしてみること。
    それが出来るか出来ないか?
    東村先生が見たいのはそこだったと思います。
    取り敢えず表現してみる。
    そして、技術を磨く。
    この二つが無いならば、漫画家になれないということをはっきりと認識出来ているかいないかが、漫画家になれた人となにも出来なかった人との差です。

    • miwa@管理人 より:

      Suica割さん

      作者さん曰く、どうしたら漫画家になれますか?っていう相談が多いので、あーもう全部まとめて答えを描いてやるよ!って思ったそうですよ。
      結論は「とりあえず描け、話はそれから」ってことなのでしょうね。
      頭の中の構想は立派でも、それを具体的な形として表現するのって、思っている以上に難しいんですよね。
      それができるようになるためには、やっぱり描くことで、絵や話を構成するスキルとセンスを磨くしかないし、それは描かないと磨かれてこないのかなと思います。