FP1級と2級の難易度比較~1級学科の合格率が低い本当の理由

私がFP1級学科を初めて受験しようと思った時(2011年の秋頃の話です)、試験に関する情報を集めている最中で率直に感じたことは、

1級の合格ラインは基礎・応用あわせて200点満点中120点(6割)、分野ごとの足切り点がないのにどうしてこんなに合格率が低いのか?

ということです。

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決して1級受験生のレベルが低いわけではない

過去3年分の1級学科・2級試験合格率を比較すると、

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1級学科受験者の殆どは既に2級に合格している人ばかりです。
(実務経験が5年あればいきなり1級を受けられるけど、大半は実務1年+2級合格で受験申請していると思われます)

なので、決して受験生のレベルが低いということはないはずです。
そして、回ごとの合格率にも結構な差があるようなので、難易度による得点調整は殆どされていないと思います。

では、1級の合格率が低い原因はどこにあるのでしょうか?また2級と比べてどのあたりが難しいのかを比較してみました。

※なお、この記事では1級実技試験については取り上げません(自分がまだ実技試験に受かっていないのでw)。
あくまで試験形式が似ている1級学科試験(基礎編・応用編)と2級試験(学科・実技)の比較であることをご了承ください。

①応用編がすべて記述式であること

まず、出題形式の似ている2級実技と1級学科応用編とを比べると、2級実技は一部が記述式である以外は択一・○×問題なのに対し、1級学科応用編はほぼオール記述式です。ここはパッと見ですぐに気づくポイントでしょう。

2014年1月の問題で比較すると…

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2級は一部記述式の計算問題がありますが、2/3は○×または語群選択なので、仮に勉強してこなかった論点が出たとしても、カンで何問か拾うことは出来ると思います。

対する1級応用編はオール記述なので、知らない問題が出題されたら全くもって解答欄を埋められない事が多いです。
(資料中から何とか部分点を拾える所もあるけど)

また、問題によっては、「問○の答えを使って解きなさい」的な指示があり、1つの計算ミスのせいで芋づる式に6~10点以上ロスする危険性もあります

なので1級応用編は、過去問を解けるようになるまで勉強してきた人とそうでない人の差が開きやすいと言えます。
少なくとも、フロックで6割以上の点が取れる可能性は殆どないわけです。

ここまで読んで「1級学科と2級の難易度差は『実技科目(応用編)が一部記述かオール記述か』くらいの違いなんだ~(´∀`)」と思った人はまだ甘い

ええ、私もそう思っていた時期がありましたよ(遠い目)2回目の受験まではそう思ってましたけど何か?

②基礎編の選択肢が地味に鬼畜

応用編はオール記述故に一見すると難しそうに見えるし、解き方を知らないと解答の書きようがない部分もあります。
だけど出題パターンのバリエーションは決して多くないんですよね。

というか、頻出の計算問題数パターンが解けるようになるだけで、5~6割の得点は可能です。
また、応用編の過去問ではあまり出題実績のない論点であっても、よく見ると基礎編の過去問の焼き直し問題だったりします。

よって、頻出の計算問題・応用編過去問・基礎編の頻出論点をマスターすれば、安定して7割前後の得点を確保することができます。
計算ミスによる芋蔓得点ロスのリスクはあるけど、うまくいけば8割以上の得点も狙えます。

ところが、一方の基礎編は一見すると2級学科とさほど差がないように見えますが、いざ試験会場で問題を解いてみると、自信を持って正解を選べる問題が案外少ないことに気づきます。

たとえば、同じ論点でも…(問題文は2014年1月試験より引用)

2級学科 問4

労働者災害補償保険(以下「労災保険」という)の給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.労働者が業務上の負傷または疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日が4日以上に及ぶ場合、賃金を受けない日の第4日目から休業補償給付が支給される。
2.遺族補償年金の支給額は、遺族補償年金の受給権者と生計を同じくする受給資格者の人数にかかわらず、一律である。
3.労働者の業務上の負傷または疾病が治癒したとき、身体に一定の障害が残り、その障害の程度が労災保険の障害等級に該当する場合、障害補償給付が支給される。
4.労働者が業務上の負傷または疾病により、労災指定病院で療養補償給付として受ける療養の給付については、労働者の一部負担金はない。

正解:2

1級学科基礎編 (2014年1月 基礎編問5)

《問5》 労働者災害補償保険の社会復帰促進等事業として行われる特別支給金に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。
1) 休業(補償)給付の受給権者である労働者に対して支給される休業特別支給金の額は,休業1日につき,原則として休業給付基礎日額の100分の30に相当する額である。
2) 障害(補償)給付の受給権者である労働者に対して支給される障害特別支給金は,障害等級の第1級から第7級に該当する者には年金として,障害等級の第8級から第14級に該当する者には一時金として支給される。
3) 遺族(補償)給付の受給権者である遺族に対して支給される遺族特別支給金の額は300万円であり,遺族特別支給金の支給を受ける同順位の遺族が複数いる場合は,その金額が按分される。
4) 遺族(補償)年金の受給権者である遺族に対して支給される遺族特別年金の額は,支給対象となる遺族が1人の場合,原則として算定基礎日額の245日分である。

正解:3

同じ労災保険の問題でも、1級のほうがマニアック臭が漂ってるのがわかると思います。

自分の場合、1級の選択肢1の誤りはすぐわかったので、2・3・4のうちどの選択肢が正しいのか、社労士試験の時に勉強したことを必死で思い出しました。

5分くらい約5年半前に勉強した記憶をたどったところで、
そういえば『特別支給金とつくものはボーナスのようなもの』というイメージで覚えたな~…ってことは2の年金支給は違うな。もしかしてこの選択肢は障害補償給付との混同を狙ってるのかな?4は遺族が一人しかいない時はこんなにもらえなかった気がするので多分×、じゃあ残った3が正解?」と苦し紛れで3にマークしたら何とか合ってました。
(社労士受験生は特別支給金の金額もしっかり覚えなきゃダメですよw)

おそらく、FP1級用の精選過去問だけの知識では、1の選択肢の正誤しか判断できないでしょう。

きんざいが発行している分冊のテキストには載ってるんですかね?でも載ってたとしても、そこまで細かい数字を暗記している受験生なんて殆どいないと思います。

もう1つ。

2級学科 問題 41 不動産の登記に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.所有権に関する登記事項は、登記記録の権利部甲区に記録される。
2.一物一権主義の原則から、一筆の土地に複数の抵当権を設定することはできない。
3.登記申請に際して提供する登記識別情報とは、登記すべき物権変動の原因となる事実または法律行為の存在を証明する情報をいう。
4.借地上の建物の賃借人は、その土地の登記記録に借地権設定の登記がなくても、当該建物に居住していれば第三者に借地権を対抗することができる。

正解:1

1級学科 問34  不動産登記に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

1) 権利に関する登記を申請する場合,申請人は,その申請情報と併せて,登記原因を証するものとして登記識別情報を提供しなければならない。
2) 所有権の登記名義人が登記義務者として登記を申請する場合に提出する印鑑証明書は,その作成後6カ月以内のものでなければならない。
3) 合筆しようとしている2筆の土地のうち,1筆に抵当権の登記がある場合,抵当権者の承諾書を添付しても,合筆の登記をすることはできない。
4) 抵当権設定の仮登記に基づき本登記を申請する際に,その本登記について登記上の利害関係を有する第三者がある場合,申請書にその第三者の承諾書等を添付しなければならない。

正解:3

同じ不動産登記の問題でも、2級の問題は「所有権→甲区、それ以外は乙区」というごく基本的な大枠さえ知ってれば、他の選択肢はわからなくても正解肢は1だってすぐにわかりますよね。

でも1級学科の不動産登記問題は、私コレ正直言って全然わかりませんでした。
2の印鑑証明の期限は多分違うだろうなと思ったけど。(正解は3ヵ月以内)

この2つの例に限らず、2級の場合は、過去問題集を一通りやれば、割とすんなり正解肢を選べる問題が多いのに対し、1級は四肢択一のうち過去問には載ってないような論点が1~3つ混ざっているので、消去法と推測を駆使して「これかな?」という感じで何とか正解にたどり着く問題が多いです。
なので、3回とも基礎編終了後の手ごたえが今一つ掴み難かったです。

自分的には、FP2級学科と1級学科基礎編の問題は、管理業務主任者とマンション管理士、宅建と行政書士(※H18以降)くらい難易度差があるのに似ていると感じました。

③教材の選択肢が少ない

もう一つ、1級学科の難点は何かというと、教材の選択肢が少ないということです。

2級・3級は市販の参考書・問題集もわかりやすく編集されているものが多いし、通学・通信講座の選択肢も多いです。

ところが、1級学科は受験生が少ないこともあってか、全体的に講座や教材の選択肢が少ないです。
通信講座を開講しているのは東京FP、きんざい、LEC、TACくらいですかね?

市販の参考書の方も、値段が高めな割には「コレ1冊で十分」的な便利な本はありません。どれを選んでも「帯に短し、襷に長し」という感じです。

合格点をとるためにはどれだけ問題演習をやればいいのか、何をやればいいのか、その組み合わせを考えるのがけっこう面倒だと思いました。
精選問題集だけでは心もとないし、下手に深入りしすぎると中途半端になるというか。

自分の場合も、「精選問題集+模擬問題集+最新過去問」の組合せと他の資格試験の知識を駆使してなんとか7割取れたというのが実情です。

しいて言うならきんざいの問題集(パーフェクトFP技能士)(通称:浮世絵)をマスターできればいいんでしょうけど、難易度が高く、一から勉強するにはいささか使いづらいです。

私は2012年の受験でコレを使って勉強したけど、難しさのあまり勉強のモチベーションが上がらず、結局問題集を解き終わらないまま試験を受けたらあっさり玉砕しましたorz

ただ、きんざいが出版しているので、何だかんだ言っても出題傾向に一番近いです。
なので精選問題集をある程度マスターしている人がプラスアルファで使うと効果的かもしれませんね。

まとめ

以上、
①応用編(2級実技に相当する部分)がall記述式
②基礎編の選択肢が鬼畜
③独学・予備校どちらにしても教材の選択肢が少ない

この3つが1級学科試験の難しい点であり、合格率が低い理由です。
そして特に②が地味に一番厄介と言えるでしょう。

精選問題集だけ解いていると、そのことに気づかないまま本試験に突入してしまう(試験本番に見たことない問題に多数出くわしてパニックになってしまう)ことが多いからです。

1級学科の「基礎編」「応用編」と聞くと、「基礎編=易しい、応用編=難しい」という漠然としたイメージを持つ人が多いと思うけど、その名称に騙されてはいけません。

ぶっちゃけ基礎編の問題は「いったいどのあたりが基礎編なんだよ(゚Д゚#)!」とツッコミたくなる問題が多いです。

というわけで、これから2級から1級学科にステップアップされる方は、

1級学科の地雷は応用編の記述問題ではなく、基礎編の選択肢に埋まっている

ということを頭の片隅に置いた上で、学習計画を立てていただきたいです。

参考:2014年1月1級受験体験記 結果通知・採点
2013年1月1級受験体験記
2012年1月1級受験体験記
2010年2級受験体験記

コメント

  1. GINGINS より:

    こんにちは。

    9月にFP1級の受験を検討してます。
    実際勉強を始めるのは7月以降になりそうなので
    miwaさんの解説を読んでたら時間が足りなさそう。

    テキストも2,3級ほど選択支がないのもつらいです。
    迷ったら浮世絵かなと思いましたがいきなり着手は難しいとのことなので
    まずはスッキリ!あたりから始めようと思います。

    • miwa@管理人 より:

      >GINGINSさん
      まずは精選系の過去問をキッチリ理解するところから始めたほうがスムーズに進められると思います。
      精選系の問題集の問題(私が使っていたのは成美堂でしたが)でも、応用編を含めて正確に解けるようになるまで1~2か月はかかるかなと…。

      • GINGINS より:

        こんにちは。

        9月合格できたらよいのですが厳しいみたいですね。
        1月合格も視野に入れて取り組みます。

        応用より基礎が鬼畜の解説は目からうろこでした。
        照会していただいた設問読んでもこれのどこが基礎なんだか。
        でも誰しもが得点源は基礎>応用って考えてしまいますものね。
        4択とは思えないハイレベルぶりだと思います。
        お勧めいただいた精選問題からこつこつ自力を積み重ねていきたいと思います。

      • miwa@管理人 より:

        >GINGINSさん
        良くも悪くも合格基準固定なので、応用編をキッチリ解けるようにすれば、9月でも合格できる可能性はありますよ。基礎編で半分取れれば、応用編7割でも120点に届きますから。

        >誰しもが得点源は基礎>応用って考えてしまいます
        応用編は計算問題なので、解けるようになるまでには少し時間がかかりますが、解けるようになると点数が安定するんですよね。
        基礎編の方は試験範囲の広さの割に出題数が少ないので、基礎編で安定して点数を取るには、それこそ1分野につき宅建レベルの勉強が必要なんじゃないかと…。

  2. おばゆう より:

    こんばんは。
    めちゃくちゃ論点捉えてますね!!

    1級学科に3回目で受かりましたが、落ちた2回はまさにおっしゃっている内容の通り(笑)

    気を抜かずに、9月の実技に挑みます!!

    • miwa@管理人 より:

      >おばゆうさん
      基礎編と応用編という言葉に騙されてはいけないということですね。
      というか、「応用編の定番問題こそがサービス問題」と感じられるレベルになるまで勉強すれば、合格点がとれるともいえます(笑)
      私も9月の実技を受験する予定です。

  3. ぷりん より:

    miwaさん、お久しぶりです。

    今回の記事も、文章・図表ともに力作ですね。
    とても興味深く読ませていただきました。

    それにしても、いくつか挙げていただいた例題なのですが、
    私自身もFP1級、社労士、宅建に合格しているのに、全然解けません(汗)
    知識って使わないとどんどん抜けていきますね…。

    >5分くらい約5年半前に勉強した記憶をたどったところで、
    →試験中に5年前の知識を呼び出せるのはスゴいです!!

    • miwa@管理人 より:

      >ぷりんさん
      本当は9月実技試験に合格したらupしようと思ってたんですが、そこまで待っていたら内容がちょっと古くなってしまうので、upしてしまうことにしました。

      >→試験中に5年前の知識を呼び出せるのはスゴいです!!
      5年前の知識だからこそ、呼び戻すのに5分かかったわけで…
      そして5分経ってもこの程度しか思い出せないという(苦笑)
      社労士受験の時はちゃんと覚えたはずなのにorz

  4. HIYOKOKING より:

    色々と分析していますが
    一級が二級より合格率が低い最大の理由は、受験者のレベルが低くなることです。
    金融機関の多くの者は、入社して二級までは受験します。しかし、一級受験時には、入社してからの年数と実務経験資格年数が、丁度、人事上、エリートコースに乗った者達が本社への選別がされた後になります。エリートコースで本社勤務となった者達は、その後は顧客と直接接触するポジション にはつきません。よって彼らはFPなどもう受験しません。
    つまり、金融機関で優秀なエリート達にとっては、業務上不要なためFP一級の受験者となることがありません。受験すれば簡単に合格出来る優秀な者達が受験に参加していないため、全体として受験者のレベルが二級より一級の方が低くなります。

    • miwa@管理人 より:

      >HIYOKOKING さん

      世の中には2級すら受からない人もいます。
      そう考えると、1級受験生全体で見れば、おっしゃるような金融機関の上位エリート層受験生は少ないとしても、2・3級すら取れない人は受けていないので、全体のレベルがそんなに低いとも思わないのですが。
      上も少なくなるかもしれないけど、下も少ないというか。
      どちらにしても、1級と2級を比較すると、1級はかなりキツい試験であることには変わりないと思います。